はじめに

システム開発委託契約書は、法的にはシステム開発に関する請負契約書と理解されるものです。システム開発委託契約書では、委託業務・委託料の明確化、仕様・検収に関する取り決め、知的財産・秘密保持など、特有の問題点が多数あります。このページでは、システム開発委託契約書のポイントについて、解説させていただきます。

システム開発委託契約書のポイント

契約目的

システム開発委託契約書では、冒頭に、「委託者は、受託者に対し、〇〇システムの企画、設計、構築等に関する業務を委託し、受託者は、これを受託する」などの契約目的を明示する条項を設けます。契約目的に関する条項を設けることは、契約の範囲や性質を特定するとともに、個別の条項の解釈の前提となるものですから、契約目的は明確に特定する必要があります。

委託業務

システム開発委託契約書において、委託業務の内容を個別具体的に明示することは、トラブル回避の観点から非常に重要です。委託者の側は「ここまでやってくれると思っていた」と考えるのに対し、受託者の側は「ここまでやるなら別料金が発生する」と考えるなど、認識の相違がトラブルの原因となるケースは少なくありません。

委託業務の規定の具体例としては、「①本件システムの企画業務。②本件システムのサーバー構築・基本設計業務。③本件システムのアプリケーション設計業務。④本件システムのアプリケーション開発・デバッグ業務。」などのように具体化・明確化することです。委託業務を具体的に定めることで、どのような業務が契約の内容となっているのか、どのような業務に対して委託料が発生するのかを、明確に確認・合意することができます。

ここで、上記の①~④に「⑤その他前各号に関連する業務。」などの文言を付加する規定例も見受けられますが、どこまでが関連業務の範囲となるのかについて、委託者と受託者とで認識の相違が生じることもあり得ます。トラブル回避の観点からすれば、このような規定の仕方はお勧めできません。

委託料

システム開発委託契約書では、委託料を明示することが必要です。委託料に関する規定のポイントは、どの業務に対して、いくらの委託料が発生するのかを定めることです。委託業務全体に対する委託料の総額のみを定めることもありますが、委託業務の内容が段階的で多岐にわたる場合には、業務ごとの委託料を区分的に定めることが必要となることもあります。

委託料の規定の具体例としては、「①本件システムの企画業務およびサーバー構築・基本設計業務:〇〇円。②本件システムのアプリケーション設計業務:〇〇円。③本件システムのアプリケーション開発・デバッグ業務:〇〇円。」などの定め方が考えられます。

また、システム開発委託契約では、追加修正作業が発生することが多々あります。そして、追加修正作業に係る費用発生をめぐる法的トラブルは、非常に多く発生しています。トラブル発生を回避するためには、システム開発委託契約書の中に、追加修正作業に係る費用についての条項を設ける必要があります。例えば、委託者の都合によって委託業務の仕様等が変更される場合や、委託者の都合によって完成物の納入期限が変更される場合には、相当額の追加費用が発生することを前提として、受託者は再見積を行って委託者に委託料の変更を請求できる旨を定めることなどが考えられます。

仕様

仕様の確定は、仕事の完成、設計・開発の範囲、追加費用の発生の有無などに影響を及ぼす重要な合意事項です。システム開発委託契約書において、「受託者が委託業務の内容、範囲その他の明細事項を定めたシステム仕様書を作成して委託者に交付し、委託者がシステム仕様書を確認した上で、委託者および受託者がシステム仕様書にそれぞれ記名・押印することによって確定する」などの規定を置く必要があります。また、仕様の変更が発生した場合には、どのようにして合意・確定するのかについても、システム開発委託契約書で定めておくことが望ましいと言えます。

検収

検収に関する合意は、その後の費用の請求や不具合の修補の問題につながる重要な取り決めです。システム仕様書の確定や検収方法・検収期間について、明確な合意ができていないために、いつまでも無償で修正作業に応じざるを得なくなるなどのケースも、数多く発生しています。このようなトラブルを回避するためには、システム開発委託契約書の中で、前述の仕様の確定に関する規定を設けるとともに、検収に関する詳細な規定を置くことが大切です。検収に関する規定の具体例としては、次のような定め方が考えられます。

(検収に関する規定例)
(1)受託者は、本件システムを、別途定める納入期限までに、別途定める納入条件によって、別途定める納入場所に納入する。
(2)委託者は、納入後7日以内に、受託者の支援を受けて、本件システムに関する検査を実施し、システム仕様書に適合する場合には、受託者に対し、書面をもってその旨を通知することによって、検収を完了する。
(3)前項の検収によって、システム仕様書に適合しないことが判明した場合には、委託者は受託者に対し、具体的な不適合部分を指摘してこれを通知し、受託者は不適合部分の修補を無償で行う。ただし、修補を行うにあたって、受託者において、本件システムの主要部分の修正が必要であると判断した場合は、委託者および受託者は、追加費用の金額および修補の期間等を別途協議する。
(4)第2項の検収の期間内に、前2項の通知がない場合および不適合の指摘がない部分については、同期間の満了をもって検収を完了したものとみなす。

知的財産

システム開発委託契約において、完成物に関する特許権、著作権などの知的財産権の帰属が問題となることがあります。トラブルの発生を防止するためには、システム開発委託契約書に知的財産権の帰属に関する条項を盛り込むべきです。

この点、委託者の立場からすると、代金の支払とともに、完成物に関する知的財産権を取得する旨を定めることが有利であると言えます。

一方で、受託者の立場からすると、今後のシステム開発業務に関する重要な資源として、知的財産権を自社で確保したいと考えることも多いでしょう。そのような場合には、完成物に関する知的財産権が受託者に帰属するものとしながら、委託者が自ら完成物を使用するために必要な範囲で、知的財産の実施や利用を無償で許諾する旨の条項を設けることとなるでしょう。

また、完成物の原型となるシステム情報等を、委託者が従前から持っているケースもあります。この場合に、単に完成物に関する知的財産権が受託者に帰属する旨だけを合意すると、委託者が次の開発のために従前から持っているシステム情報を活用することができなくなってしまいます(知的財産権の侵害の問題が発生するため)。そこで、委託者が従前から有している知的財産権が、引き続き委託者に帰属することを確認する旨の規定を設けることが必要です。

秘密保持

システム開発委託契約では、当事者間で技術上の秘密や営業上の秘密の開示を伴うことがあります。このような場合には、システム開発委託契約書に秘密保持条項を定めて、自社の秘密を守る必要があります。なお、秘密保持条項については、秘密保持契約書を別途作成する運用も多く行われております。詳しくは、「秘密保持契約書」のページをご覧ください。

システム開発委託契約書に秘密保持条項を設ける場合には、「委託業務を遂行するにあたって知り得た相手方の技術上または営業上その他委託業務に関連する一切の情報を、事前に相手方の書面による同意を得ることなく、第三者に開示もしくは漏洩し、または本契約の目的以外に使用してはならない」などの条項を置きながら、開示時点で既に自己が保有していた情報や既に公知であった情報、法令の定めによって開示することが必要な場合などには、秘密保持の義務を負わない旨を定めるのが通常です。

弁護士にご相談ください

以上のほかにも、システム開発委託契約書には、注意すべきポイントが多々あります。

契約書のチェック・作成については、法律の専門家である弁護士にご相談ください。八戸シティ法律事務所では、これまでに、地域の企業・法人様から、契約書のチェック・作成に関するご相談・ご依頼を多数お受けして参りました。ぜひ一度、八戸シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。

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