はじめに

請負契約とは、請負人が仕事の完成を約束し、注文者が仕事の完成に対する報酬の支払を約束することを内容とする契約です。
請負契約の典型的なものは、工事請負契約です。
工事請負契約において、トラブル発生を未然に防止し、トラブル発生時に不測の損失を回避するためには、事前に工事請負契約書を取り交わしておくことが大切です。

この点、工事請負契約書については、様々な標準約款(国土交通省)やひな型が公表されていますが、必ずしも個々の取引の実情に適合するものではなく、自社の利益が守られる形で作成されているわけではありません。
標準約款やひな型をそのまま使用すると、不測の損失を被るおそれがありますので、工事請負契約書の内容については、十分な検討と確認が必要です。

このページでは、工事請負契約書のチェック・作成のポイントについて、ご説明させていただきます。

工事請負契約書のポイント

工事の遅延

工事請負契約書では、工事の遅延が発生した場合の違約金について、規定を設けるのが通常です。
工事請負契約書で違約金を明示しておかなければ、工事の遅延が発生した際の損害賠償額をめぐって、深刻なトラブルが発生するおそれがありますので、ご注意ください。

違約金の額としては、注文者の立場からすれば、高額であることが望ましいのですが、請負人の正常な利益に配慮してバランスを取るのであれば、請負代金全体に対して年5%程度が適切であると考えられます。

工期の延長

工事請負契約においては、工期の延長が必要となるケースも出てきます。
そこで、工事請負契約書では、工期の延長に関する規定を置くのが一般的です。
この点、「不可抗力または正当な理由があるとき」には「工期の延長について注文者および請負人が協議して定める」などと規定する例が多く見られます。

一方で、この定め方では、請負人の立場からすれば、工期の延長の可否および日数が不明確になるおそれがあります。
そのため、「天候不順」や「請負人からの仕様の問い合わせに対し、注文者が7日以内に使用を決定しなかったとき」などの延長可能な場合を例示し、延長の日数についても、「天候不順により工事ができなかった日数」や「注文者が仕様を決定するために要した日数のうち、7日を超える日数」などの明示をすることで、工期の延長をめぐるトラブルを回避することが考えられます。

工事の追加・変更

工事請負契約では、工事の追加・変更が発生することがあり得ますが、追加・変更工事の請負代金について明確な合意がない場合に、紛争化するケースが少なくありません。
請負人が追加・変更工事を完成して請負代金を請求する段階になって、注文者から、追加・変更工事を発注した事実はない、当初の工事の手直しであると考えている、サービス工事であると思っていたなどの反論が出されるのが典型的です。

追加・変更工事の請負代金をめぐる紛争では、過去の裁判例をベースとすると、請負人において、「追加・変更工事が当初の請負契約に含まれないものであり、注文者・請負人間で、追加の請負代金が発生することについての合意があったこと」を証明した場合に、追加の請負代金の請求が認められます。
この合意は黙示的なもので足りると考えられており、注文者・請負人がともに事業者である場合には、追加・変更工事を行うことについて注文者が同意・黙認していれば、客観的に相当な金額の追加の請負代金が認容される傾向にあります。

しかし、このような判断枠組があるとしても、黙示的な合意の有無をめぐって注文者・請負人が争った末に、やっと解決が図られる姿は好ましくありません。
トラブル回避の観点からは、工事の追加・変更が発生した場合には、別途追加・変更工事に係る工事請負契約書を締結するのがベストです。
しかし、工期などとの関係で契約書締結が困難なこともあるでしょう。

そこで、次善の策として、工事請負契約書において、工事の追加・変更が発生する際には、注文者が請負人に対して工事の追加・変更に係る請負代金を明記した注文書を交付し、請負人が注文者に対して請書を交付することをもって合意するなどのルールを定めるとよいでしょう。
そのうえで、工事請負契約書で定めたルールに従って、工事の追加・変更を運用していくことが大切です。
また、追加・変更工事に関するやり取りの過程で、追加の請負代金に係る見積書や打ち合わせの議事録を作成し、合意の有無について立証できるように備えておきましょう。

クレーム対応

工事請負契約では、工事中に近隣からのクレームが発生することがあります。
工事請負契約書では、近隣からのクレームへの対応に関する条項が置かれることも多いでしょう。
この点、標準約款やひな型では、工事の施工に当たって第三者と紛争が発生したときは、請負人の責任と費用で解決しなければならないと定められているのが通常であり、注文者の立場からすると、この定め方で問題はないでしょう。

一方で、請負人の立場からすると、工事請負契約書において、請負人に責任のない近隣からのクレームが発生した場合には、注文者の責任と費用で解決するという定めにすることが望ましいと言えます。
また、請負人に責任のない近隣からのクレームによって、工事を中断せざるを得なくなった場合には、中断した日数分、工期が延長されることを定めておくことが望ましいでしょう。

土壌汚染・地中障害物・埋蔵文化財などの発見

工事請負契約書では、土壌汚染・地中障害物・埋蔵文化財などの発見によって、請負人に想定外の費用がかかる場合の取扱いについて、規定が置かれることが多いです。
しかし、標準約款やひな型では、このような場合の請負代金の変更について、「注文者および請負人が協議して定める」などと規定されていることが多く、請負人の立場からすれば、請負人の責任なく余計にかかった費用を注文者に対して請求できるかどうかが不確実です。
そこで、前述の工事の追加・変更の場合と同様に、別途契約書を締結するとか、事前の策として、注文書・請負人間で注文書・請書を取り交わすルールを工事請負契約書に定め、追加の代金に係る見積書や打ち合わせの議事録を作成するなどの対応が考えられます。

弁護士にご相談ください

以上のほかにも、工事請負契約書には、注意すべきポイントが多々あります。

契約書のチェック・作成については、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
当事務所の弁護士は、これまでに、地域の企業・法人様から、契約書のチェック・作成に関するご相談・ご依頼を多数お受けして参りました。
ぜひ一度、当事務所にご相談いただければと存じます。

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