はじめに

不動産売買は、比較的高額の取引となることが多く、契約書におけるリスク回避の観点が重要となります。また、契約締結から履行完了までの期間が比較的長期である、対象不動産に担保権が設定されている、買主がローンを利用するなどのケースがあることから、取引の実情に合わせた契約書を作成しなければなりません。

このページでは、不動産売買契約書のポイントについて、ご説明させていただきます。

不動産売買契約書のポイント

所有権移転の時期

物件の所有権移転時期について、不動産売買契約書に定めがない場合には、契約締結時であるとされます。しかし、不動産売買契約では、契約締結から代金支払までの期間が長くなることが少なくありません。そのため、売主の立場からすると、不動産売買契約書で物件の所有権移転時期を別に定める(後に動かす)必要があります。通常は、代金の支払時や(代金の支払を前提とする)物件の引渡時に所有権が移転すると定めることが多いでしょう。

所有権移転登記の時期

不動産の所有権を売買で取得したことは、所有権移転登記を行わなければ、第三者に対抗することができません。そのため、買主の立場からすると、物件の所有権が移転すると同時に所有権移転登記の手続をし、物件の所有権の取得を確定させることが必須となります。不動産売買契約書に、代金支払時に物件の所有権が移転するとともに所有権移転登記の手続を行うとの規定が設けられるのが通常です。

手付

不動産売買では、手付金の支払が行われることが多いです。その場合には、不動産売買契約書に手付に関する条項を盛り込みます。手付は、証約手付(売買契約が成立したことを証するための手付)、解約手付(売主の手付金放棄・買主の手付金倍返しによる売買契約の解約を認めるための手付)、違約手付(契約違反時の損害賠償の予定額としての手付)の3種類があります。

手付がどの種類に該当するのかについては、法律上、取引当事者で反対の意思表示がなければ、解約手付であると推定されます。また、不動産売買契約書で、違約手付であることが明記されていたとしても、法律上、解約手付兼違約手付とされるのが原則であるため、解約手付の趣旨ではないのであれば、解約手付の趣旨ではないことをしっかりと明記する必要があります。

なお、宅建業者が売主となる場合には、売買代金の20%を超える額の手付金を受け取ることが禁止されており(宅建業法39条1項)、買主の履行の着手よりも前に手付解除を制限することが禁止されています(宅建業法39条3項)。

危険負担

危険負担とは、契約締結のあと物件引渡しの前に、売主・買主のいずれにも責任がない事由によって物件が滅失・損傷した場合に、そのリスクを売主・買主のいずれが負担するのかという問題です。すなわち、このような場合に、買主は売主に対して売買代金を支払う必要があるのかという問題なのです。

この点、現在の民法では、物件引渡しの前に物件が滅失・損傷した場合でも、買主は売主に対して売買代金を支払わなければならないものとされています(民法534条1項)。しかし、買主が正常な物件の引渡しを受けられないにもかかわらず、売主に対して売買代金を支払わなければならないのは、不合理であるというのが通常の感覚です。そこで、ほとんどの不動産売買契約書では、物件引渡し前に物件が滅失した場合には買主は契約を解除できるとか、物件が損傷した場合には売主は修繕義務を負うなどの定めに変更されています。

なお、2020年施行の改正民法では、物件引渡しの前に物件が滅失・損傷した場合には、売主は売買代金の支払を拒むことができると改正されています。

使用目的

売買の対象となる不動産の使用目的についても、不動産売買契約書に明示することが大切です。不動産の使用目的が明示されることで、売買契約の解除における履行不能に該当するかどうかの判断や、契約不適合責任(2020年施行の改正民法において、現在の民法の瑕疵担保責任に代わって導入される規定)における不適合性の判断に役立ちます。

例えば、売買の対象となる土地に土壌汚染が判明した場合に、土地の使用目的が住宅を建築するためであるか、工場を建設するためであるかによって、契約不適合に該当するかどうかの結論が変わってくることが考えられます。このように、不動産の使用目的を不動産売買契約書に規定しておくことは、トラブル発生時の適正な解決に役立つこととなります。

土地の境界

土地の売買契約においては、物件の特定は不動産登記簿によって行うのが基本ですが、隣地との境界が不明確であることがあります。そのような場合には、土地の引渡しまでに境界を確定させるのか、境界を確定させずに現状有姿で引き渡すのかを、不動産売買契約書に記載しておく必要があります。

また、隣地との境界を確定させる場合には、境界確定の費用を売主・買主のいずれが負担するのか、境界を確定させずに引き渡す場合には、後々隣地との境界紛争が発生した場合の責任をどうするのかについても、不動産売買契約書に明示するべきです。さらに、実測面積と公簿面積とが異なる場合に、売買代金の増減額を行うかどうかについても、不動産売買契約書で合意する必要があります。

担保権等の消除

不動産は、抵当権が設定されるとか、賃貸借の目的とされるなど、負担付きの物件となっているものが少なくありません。そして、買主としては、不動産にそのような負担がある状態では、購入する目的が達成できないことも多いでしょう。そのような場合には、不動産売買契約書に、売主が担保権等の消除をしたうえで買主に物件を引き渡すことを明記するべきです。

また、不動産に関する公租公課や負担金の未納がある場合には、不動産の差押えを受けるなどのリスクがありますので、事前に納税証明書の提出を求めるとか、物件引渡しの前に完済しなければならないことを不動産売買契約書に盛り込むなどの対応が必要です。

残置物の所有権放棄

不動産の引渡しを受けたあとに、土地の上や建物の中に残置物があることがあります。残置物の所有権が売主にあるのであれば、法律上、買主が勝手に処分することは許されず、売主の許可を求めなければならないのが原則です。

そこで、買主の立場としては、不動産売買契約書に、不動産の引渡後に土地の上や建物の中に残置した物については、売主は所有権を放棄して買主が処分することに異議を述べない旨の条項を設けることが必要です。また、残置物の処分費用を売主・買主のいずれが負担するのかについても、不動産売買契約書に規定を置きましょう。

関係書類の引渡し

建物の売買では、買主の立場としては、売主から、建築確認通知書・検査済証、図面・仕様書・附属書類などの関係書類の引渡しを受ける必要があります。なぜなら、将来的に建物を転売する際に、これらの関係書類が揃っているかどうかにより、売却価格が大きく異なることがあるためです。そこで、不動産売買契約書に、これらの関係書類の引渡しが必要であるとの条項を盛り込むようにしましょう。

融資利用に関する条項

不動産売買では、買主が融資(ローン)を利用して購入するケースが多くあります。融資利用を前提とする不動産売買契約書では、融資の審査が通らないために売買ができなくなる事態に備えた条項を置く必要があります。

この点、融資の審査が通らなかった場合には、買主に契約解除を認めるとすることが多いでしょう。また、融資の審査に一定の時間を要する場合には、審査結果が出るまでに諸経費(測量費用など)が発生することがありますので、諸経費を売主・買主のいずれが負担するのかを定めておくべきです。さらに、融資の審査が通らなかった場合の手付金の取扱い(多くのケースでは手付金を返還することとされます)に関する条項を置くことも必要です。

区分所有物件の管理費に関する条項

マンションの一室などの区分所有物件を購入する場合には、売主に管理費や修繕積立金の未納がないかどうかについて、確認をすることが必要です。売主に管理費等の未納がある場合には、法律上、買主も支払義務を負うこととされているためです。買主としては、事前に管理費等の支払状況を確認するとともに、物件引渡しの前に完済しなければならないことを不動産売買契約書に盛り込むべきでしょう。

強行法規との整合性

不動産売買契約書は、自身に不利益にならないように内容を検討すべきですが、強制力のある法律の規定(強行法規)に違反することのないように、注意しなければなりません。強行法規の例としては、以下のようなものがありますが、不動産売買契約書に強行法規に違反する条項を設けたとしても、その効力は認められません。

(強行法規の例)
①宅建業法40条:宅建業者が売主となる不動産売買契約では、瑕疵担保責任の期間を物件引渡時から2年以上とする特約を除き、買主に不利益な事項を定めることはできません。
②品確法95条:新築建物の売主は、物件引渡しから10年間、建物の主要構造分の瑕疵について責任を負わなければならず、これを短縮することはできません。
③消費者契約法8条:売主が事業者、買主が消費者である場合には、消費者契約法が適用され、瑕疵担保責任の全部の責任を免れる旨の規定を設けることはできません。

弁護士にご相談ください

以上のほかにも、不動産売買契約書には、注意すべきポイントが多々あります。

契約書のチェック・作成については、法律の専門家である弁護士にご相談ください。八戸シティ法律事務所では、これまでに、地域の企業・法人様から、契約書のチェック・作成に関するご相談・ご依頼を多数お受けして参りました。ぜひ一度、八戸シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。

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