はじめに

企業・法人が従業員を採用する際には、入社前から入社後、勤務の開始から退職に至るまでの様々なトラブルを避けるために、法務的な対策を講じることが必要です。このような従業員採用時の必要事項の例として、以下のようなものが考えられます。

従業員採用時の必要事項

内定通知書・内定承諾書

採用選考の結果、内定を出す際には、内定通知書を交付するようにしましょう。内定通知書には、入社日や提出書類・提出期限、内定取消事由などを記載します。就業規則などに内定取消事由が定められている例が多いですが、入社前の採用内定者には就業規則を見せないのが通常と思われます。内定を取り消さざるを得なくなる事態に備えて、内定通知書に記載する形で内定取消事由を明示するのがよいでしょう。

また、採用内定者が内定通知書を受領し、内定を承諾したことを証するために、内定承諾書にサインを求めましょう。内定通知書・内定承諾書の授受を行うことで、内定辞退を防止する一定の効果があると言われています。

入社時誓約書

従業員が入社後にトラブルを起こさないように、従業員としての義務や禁止事項を記載した誓約書に、入社時までにサインさせるようにしましょう。入社時誓約書に盛り込むべき内容としては、①就業規則および職務命令を遵守すること、②機密事項や個人情報の漏洩や使用を禁じること、③履歴書の記載や採用面接時の受け答えに虚偽がないこと、④業務内容や勤務地の変更などの人事方針に従うこと、⑤在職中および退職後に従業員の引き抜きを行わないこと、⑥在職中および退職後に顧客の持ち出しを行わないこと、⑦故意または重大な過失で自社に損害を与えた場合に賠償責任を負うことなどが考えられます。

入社時誓約書の内容を十分に説明して、従業員の入社時までにサインをさせることで、入社後にトラブルを起こさないように注意喚起できますし、万が一トラブルが発生した場合にも、自社の損失を最小限に抑えるために活用することができます。

身元保証書

入社時までの提出書類として、身元保証書の提出を求めることをお勧めいたします。身元保証書とは、もし従業員が会社に損害を与えた場合に、身元保証人となった者が連帯して損害賠償に応じることを確認する書面のことを言います。身元保証人は、その従業員の両親や親族がなるのが通例です。

身元保証法という法律により、身元保証の期間は、特に定めをしなければ原則として3年、期間を定める場合でも上限は5年とされており、自動更新とすることはできません(期間満了後も引き続き身元保証が必要な場合には、期間満了ごとに新たに身元保証書を差し入れさせる必要があります)。そして、従業員が業務上不適任・不誠実であると考えたり、従業員の業務内容や勤務地を大きく変更したりした場合には、身元保証人に通知する義務があります。この場合には、身元保証人は、保証から外れることが認められています。

また、身元保証人に対して従業員が発生させた損害の賠償を請求する場合には、損害の全額賠償が認められることは少なく、大幅に減額されるのが通常です。身元保証人の責任額が裁判で争われた場合には、従業員を監督する企業・法人側の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由、従業員の業務内容または身上の変化、その他一切の事情を考慮して決定されます。

このように、身元保証人の責任の範囲は、法律上、限定されたものとなっています。企業・法人としては、身元保証書を提出させることで、十分なリスク対策を図れるとは言いがたいのが実情です。しかし、従業員の両親や親族などがサインした身元保証書を提出させることで、慎重・誠実に業務を遂行するように注意喚起することが期待できます。また、従業員が企業・法人の金銭を横領し、従業員本人に賠償資力がないという場合などは、身元保証人がいなければ、企業・法人として打つ手がなくなることも考えられます。身元保証書を提出させることは、企業・法人のリスク対策の一つとして、採用するべきと言えるでしょう。

マイカー通勤誓約書

青森県などの地方都市では、従業員にマイカーでの通勤を認めることは避けられないのが通常でしょう。従業員がマイカー通勤時に交通事故や飲酒運転などの不祥事を起こした場合には、企業・法人に対して損害賠償請求や社会的非難が向けられることもあり得ます。

そこで、企業・法人としては、従業員のマイカー通勤時における不祥事対策として、マイカー通勤を許可する条件として、マイカー通勤に関する遵守事項を記載した誓約書にサインを求めるのがよいでしょう。マイカー通勤誓約書に盛り込むべき内容としては、自賠責保険および自動車保険(任意保険)への加入義務、交通法規遵守・安全運転義務、交通事故発生時の報告義務、交通事故による損害の自己責任などが挙げられます。

マイカー業務上使用誓約書

企業・法人の実情によっては、従業員のマイカーを業務上使用させることもあり得ます。従業員が業務上マイカーを運転し、交通事故を起こすなどした場合には、企業・法人が責任追及を受けることは避けられません。また、マイカーの破損・盗難やガソリン代の負担などをめぐって、従業員とトラブルになることなども想定されます。

そこで、マイカーの業務上使用に関する厳格なルールを定めた誓約書を作成し、従業員にサインを求めることが必要です。マイカー業務上使用誓約書に盛り込むべき内容としては、賠責保険および自動車保険(任意保険)への加入義務、交通法規遵守・安全運転義務、交通事故発生時の報告義務、破損・盗難があった場合の補償の有無、ガソリン代などの支給の有無などが挙げられます。

その他

以上のほかにも、企業・法人の実情に合わせて、従業員採用時の必要事項を見極め、対応していく必要があります。例えば、未払い残業代をめぐるトラブルを防止するために、固定残業代に関する合意書を取り交わすことなどが考えられます。

弁護士にご相談ください

以上のように、従業員採用時に対応すべき法務には、様々なものがあります。八戸シティ法律事務所では、個々の企業・法人様の実情に合わせて、内定通知書・内定承諾書、入社時誓約書、身元保証書などの整備・運用をサポートさせていただきます。従業員採用時の法務に関してご不明のことがありましたら、八戸シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。

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