懲戒処分とは

懲戒処分とは、従業員の企業秩序違反行為に対する制裁のことを言います。

懲戒処分には、①問題を起こした従業員本人に対して制裁を加えることで、企業秩序を維持する目的と、②懲戒処分を受けた従業員の行動に問題があることを全従業員に対して明示し、企業秩序を維持することの2つの目的があります。

懲戒処分の種類

懲戒処分の種類としては、①戒告・けん責・訓戒、②減給、③出勤停止、④降格、⑤諭旨解雇・諭旨退職、⑥懲戒解雇の6種類があります。ただし、企業・法人によっては、就業規則で、懲戒処分の種類が4種類や5種類となっていることもあります(例えば、上記の6つの懲戒処分のうち、降格が定められていないケースなどがあります)。

①戒告・けん責・訓戒

戒告・けん責・訓戒は、従業員の問題行動に対して、文書で注意・指導する懲戒処分です。企業・法人によって、戒告、けん責、訓戒など名称が異なりますが、同じ意味です。

戒告・けん責・訓戒は、あくまで注意・指導するだけの内容ですが、懲戒処分として行うものである以上、全従業員に対して従業員の行動に問題があることを明示する効果を持ちますので、単なる個人的な注意・指導とは異なります。

②減給

減給は、従業員の問題行動に対して、給与を減額する懲戒処分です。

減給は、法律上、1回の問題行動に対する減給としては、1日分の給与額の半額が限度額とされています。

出勤停止

出勤停止は、従業員の問題行動に対して、一定期間の出勤を禁止し、その期間の給与を無給とする懲戒処分です。

出勤停止の期間については、法律上の上限はありませんが、就業規則で上限を定めるのが通常です。出勤停止の期間中は、給与が支給されないこととなるため、経済的不利益の程度は大きいものとなります。

④降格

降格は、従業員の問題行動に対して、役職や資格を下位に引き下げる懲戒処分です。

降格されると、役職手当などが下がるのが通常であるため、長期的には出勤停止よりも経済的不利益の程度が大きくなります。

⑤諭旨解雇・諭旨退職

諭旨解雇・諭旨退職は、従業員の問題行動に対して、退職届の提出を勧告し、退職届を提出しない場合には懲戒解雇する懲戒処分です。

懲戒処分の不利益が非常に大きいことから、退職の形とする機会を与えるものです。企業・法人によって、諭旨解雇または諭旨退職の名称とされていますが、同じ意味です。

諭旨解雇・諭旨退職の場合に退職金が支払われるかどうかは、その企業・法人の就業規則や退職金規程によりますが、全額支給するものと定めている企業・法人が多いです。

⑥懲戒解雇

懲戒解雇は、従業員の問題行動に対して、解雇する懲戒処分です。

懲戒処分は、最も重い懲戒処分です。懲戒解雇の場合には、就業規則や退職金規程で、退職金の全部または一部を支払わないことが定められているのが通常です。ただし、退職金の不支給については、これまでの勤続の功を帳消しにするような重大な非違行為があることが要件とされますので、慎重にご判断いただく必要があります。

懲戒処分のルール

就業規則の根拠が必要である

懲戒処分を下すためには、就業規則の根拠が必要です。就業規則に定められた懲戒事由に該当する場合にのみ、懲戒処分を行うことができます。就業規則の根拠を欠く懲戒処分は無効とされますので、事前に就業規則の懲戒・懲罰・制裁の規定を確認することが必要です。また、近年では職場における問題行動が多様化・複雑化していますので、就業規則の懲戒・懲罰・制裁の規定を、時代に合わせた形に整備・改正することもご検討ください。

また、懲戒処分を行うための手続として、就業規則に、従業員に対して弁明の機会を与えることや、懲戒委員会の決議を行うことなどが定められていることがあります。就業規則に定められた手続を踏まなければ、それだけで懲戒処分が無効と判断されてしまうこともありますので、ご注意ください。そして、仮に就業規則に懲戒処分を行うための手続規定が定められていない場合であっても、懲戒処分は従業員への不利益が大きく、懲戒処分を契機とするトラブルの発生も懸念されることから、原則として、従業員に対して弁明の機会を与えたうえで、懲戒処分を下すかどうか、懲戒処分の種類をどうするかなどをご判断いただくべきでしょう。

問題行動と懲戒処分とのバランスが取れていること

問題行為の内容・程度と比較して、懲戒処分が重すぎることがあってはなりません。懲戒処分の選択を誤って重すぎる懲戒処分を下せば、後々裁判で懲戒処分が無効とされるリスクがあります。

例えば、数日以内の無断欠勤のケースや、業務上のミスに関して初めて懲戒処分を行うケースなどで、いきなり懲戒解雇を選択するのは重すぎると判断されるのが通常です。問題行動の内容・程度、企業・法人の損害の有無・程度、その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由と社会通念上の合理性のある懲戒処分を選択しなければなりません。

1回の問題行動に対して二重処罰はできない

従業員の1回の問題行動に対して、複数回の懲戒処分を行うことはできません。過去に懲戒処分を受けたことがある従業員に対して、再度の懲戒処分を行う場合には、以前の懲戒処分で制裁済みの問題行動について、今回の懲戒処分の対象とすることのないように、注意するようにしましょう。

なお、就業規則において、戒告・けん責・訓戒などの懲戒処分では、従業員に始末書を提出させる旨を定めている例が多くあります。懲戒処分を受けた従業員が任意に始末書を提出すればよいのですが、従業員が始末書の提出を拒否してきた場合には、これを強制することは法律上認められないと考えられます。謝罪や反省などの精神的な服従までは強いることができないためです。そして、従業員が始末書の提出を拒否したことに対して、元々の懲戒処分に加えてさらに懲戒処分を行うことは、違法とされるリスクが高いため、避けるべきであると言えます。

懲戒処分をめぐるトラブル

懲戒処分は、従業員に対して不利益を与え、従業員の自尊心を損なうものであるため、懲戒処分を契機とするトラブルに発展することも少なくありません。懲戒処分が違法・無効と判断されると、懲戒処分を受けた従業員の経済的不利益の補償、慰謝料の支払、懲戒解雇の場合には従業員の復職と賃金の支払を命じられることとなります。トラブルへの対応コストも含めますと、企業・法人にとっては大きなリスクであると言えます。

一方で、企業秩序を維持するためには、従業員の問題行動を放置することがあってはなりません。懲戒処分をルーズに行うことは避けなければなりませんが、懲戒処分の制度を適正かつ慎重に運用していくことが企業・法人の運営上、必要不可欠です。懲戒処分の理由となる事実関係の調査(当事者・関係者からのヒアリング、証拠の収集など)、懲戒処分の種類の選択、弁明の機会付与等の手続など、企業・法人側の隙を作らないように慎重に進めていくようにしましょう。

弁護士にご相談ください

懲戒処分をめぐるトラブルを予防するためには、事前に労働問題に精通した弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。懲戒処分を行ってトラブルが発生した後にご相談いただくこともできますが、その段階では有効な対応が難しいケースもあり、懲戒処分の撤回や高額の解決金の支払が必要となることもあり得ます。

八戸シティ法律事務所では、懲戒処分の理由となる事実関係の調査や、懲戒処分の種類の選択に関するアドバイス、弁明の機会付与等の手続のサポート、懲戒処分通知書の作成・交付など、充実した法的サービスを提供させていただきます。

また、懲戒処分を言い渡す際には、従業員から反発を受けたり、企業・法人側の不適切な発言がトラブルを招いたりすることも想定されます。そこで、八戸シティ法律事務所では、弁護士が懲戒処分の言い渡しの場に同席し、企業・法人側に立って説明対応するなどのサポートを承ります。

さらに、八戸シティ法律事務所では、懲戒処分をめぐるトラブルが発生した場合の交渉・裁判対応、懲戒処分をめぐるトラブルを防止するための就業規則等の整備・改正など、様々なサポートをご提供させていただきます。

懲戒処分に関することで、お困りの企業・法人様がいらっしゃいましたら、八戸シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。

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