退職勧奨とは

退職勧奨とは、企業・法人が従業員に対し、退職を促すことを言います。解雇が従業員の同意なく一方的に雇用契約を終了させることを言うのに対し、退職勧奨は従業員に退職することを了解してもらったうえで、退職届を提出してもらう方法です。

法律上、従業員の解雇が有効とされるには厳格な要件があり、従業員を解雇することには大きなリスクを伴います。そこで、企業・法人側の意向で従業員との雇用契約を解消する方法として、退職勧奨が行われることが多々あります。そして、企業・法人が退職勧奨を行うこと自体は、何ら違法ではないと考えられています。

しかし、退職勧奨をされた従業員としては、解雇あるいは退職強要と受け止めることも多いものです。そして、企業・法人が退職勧奨のやり方を間違うと、従業員とのトラブルに発展し、慰謝料などの金銭支払を命じられることも少なくありません。退職勧奨の判断と実行は、慎重に行うようにしましょう。

退職勧奨の注意点

企業・法人が退職勧奨を行うこと自体は、違法とされるものではありません。しかし、退職強要やパワーハラスメントに該当すると判断されると、企業・法人が従業員とのトラブルに陥ったり、裁判で慰謝料などの支払を命じられたりする危険があるため、注意が必要です。企業・法人が退職勧奨を行う場合の注意点は、以下のとおりです。

長時間・多数回の退職勧奨は危険

従業員が退職を拒否しているにもかかわらず、長時間・多数回の退職勧奨が行われた場合には、違法な退職強要と評価されるリスクが高くなります。退職勧奨のための1回あたりの面談時間が2時間以上の長時間になるとか、10回以上の多数回にわたる退職勧奨が繰り返されるなどした場合には、違法と判断される危険が大きいでしょう。

退職させることを目的とした配置転換・仕事の取り上げは危険

従業員を退職に追い込むことを意図して、嫌がらせ目的で配置転換や仕事の取り上げを行うことは、退職強要やパワーハラスメントに該当すると評価されます。また、仮に退職に追い込もうという意図はなくても、退職勧奨の対象となる従業員に対して、配置転換や仕事内容の変更を命じる場合には、退職に追い込むための嫌がらせの目的であると誤解されることも想定されます。このような場合には、従業員に配置転換の必要性や仕事内容の変更の理由を十分に説明して、誤解を与えないように努めるべきです。

仕事上のミスが多いとか、上司・同僚との協調性がないなどの理由で退職勧奨を行う場合には、業務上の支障を回避するための措置として、退職勧奨の対象となる従業員に対し、配置転換や仕事内容の変更を命じなければならないケースもあり得ます。このような場合には、その従業員に誤解を与えないように、十分な説明を行うようにしましょう。

「退職届を出さなければ解雇する」という発言は危険

「退職届を出さなければ解雇する」という発言で退職を迫ることは控えましょう。実際に裁判所で解雇が有効と認められるだけの材料があれば別ですが、このような発言を受けた従業員が退職届を提出したとしても、後々、裁判で退職が無効とされるリスクがあります。

そして、裁判で退職が無効と判断されると、企業・法人としてはその従業員を復職させたうえで、退職のために受領できなかった賃金を遡って支払うことを命じられます。また、「退職届を出さなければ解雇する」という発言は、退職強要やパワーハラスメントに該当するものとして、企業・法人に慰謝料の支払が命じられることも考えられます。

退職勧奨の流れ

①退職勧奨の方針を社内で共有する

退職勧奨を行うことについて、事前に社内で方針を共有するようにしましょう。これにより、退職勧奨が自社の総意であることを、対象となる従業員に示すことができます。

②退職を求める理由を整理したメモを作成する

退職勧奨に臨むにあたって、事前に退職を求める理由を整理したメモを作成するようにしましょう。退職勧奨の席では、退職を求める側も、求められる側も、相当のプレッシャーがかかります。また、退職勧奨を受けた従業員が、攻撃的な反論をしてくることも考えられます。必要な内容をきちんと伝えることができるように、事前にメモを作成しておくことが大切です。

③従業員を個室に呼び出す

退職勧奨は、会議室などの個室で行うべきです。他の従業員などに聞こえる状況で退職勧奨を行うと、対象となる従業員のプライバシーや自尊心を侵害するパワーハラスメントと認定されるおそれが高いため、ご注意ください。

④従業員に退職してほしいという意向を伝える

対象となる従業員に対して、退職してほしいという自社の意向を伝えます。その際には、事前に作成したメモに沿って、退職を求める理由や退職勧奨を行うに至った経緯などを、丁寧に説明するようにしましょう。退職勧奨を受けた従業員からは、反論や質問が出されることがありますが、事前に作成したメモを見ながら、冷静に対応していくことが大切です。

なお、退職勧奨のための面談の席では、対象となる従業員が秘密で会話を録音していることが少なくありません。会話を録音されていることを想定して、説明の仕方には十分に注意する必要があります。また、逆にこちらが会話を録音しておくこともお勧めです。退職勧奨をされた従業員が退職を強要されたと訴えても、録音された会話の状況から強要していないことが明らかであれば、その従業員の主張を覆すことができます。

⑤従業員に回答期限を伝えて検討を促す

退職勧奨のための面談の場で、対象となる従業員に即答を求めることは避けましょう。強引な印象が強いですし、退職を強要されたと攻撃される材料になります。退職を即座に決めろというのは無理難題であり、家族にも相談しなければ決められないのが通常です。

そのため、再度の面談の日程を設けて、次回の面談までに回答するように、従業員に検討を促すようにしましょう。例えば、金曜日に退職勧奨のための面談をして、週末に検討するように促し、月曜日に再度の面談の日程を設けることなどが考えられます。

⑥従業員と退職の時期・金銭面の条件などを話し合う

対象となる従業員が退職に応じることに前向きな意向を示した場合には、退職の時期や金銭面の条件などを話し合いましょう。金銭面の条件としては、一定の解決金の支払や、退職金の増額などが考えられます。

なお、従業員が退職勧奨に応じて退職する場合には、退職理由は「会社都合退職」とするべきです。

⑦従業員に退職届を提出させる

退職の時期や金銭面の条件などがまとまった場合には、退職する従業員に退職届を必ず提出させるようにしましょう。退職届は、従業員が、解雇ではなく退職勧奨に応じて退職を承諾したことを裏付ける重要な証拠となります。

弁護士にご相談ください

退職勧奨を行う際には、事前に労働問題に精通した弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

退職勧奨を一旦行うと、その従業員との信頼関係が破壊され、場合によっては反抗的な態度を取るようになることも考えられます。その結果、企業・法人としては、その従業員を解雇せざるを得なくなり、不当解雇をめぐる重大なリスクを抱えることも想定されます。退職勧奨に踏み切る前に、そのリスクを慎重に検討しなければなりません。また、退職勧奨を契機として、退職強要や不当解雇をめぐるトラブルが勃発するケースが増えています。まずは弁護士にご相談いただいたうえで、弁護士のサポートのもとに慎重に退職勧奨を検討し、進めていくことが大切です。

八戸シティ法律事務所では、退職勧奨の適否や進め方、退職勧奨に応じてもらえない場合のリスクについて、具体的な事情をお聞きしながらアドバイスさせていただきます。また、退職勧奨に臨む際の事前のメモの作成や、退職勧奨のための面談への立会など、安心して退職勧奨を進めるためのサポートを提供させていただきます。さらに、退職勧奨により発生したトラブルへの交渉・訴訟対応についても、お任せいただけます。

退職勧奨についてご不明のことや、お困りのことがおありの企業・法人様がいらっしゃいましたら、是非一度、八戸シティ法律事務所にご相談ください。

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