はじめに

就業規則とは、従業員が就業上遵守すべき規律および労働条件に関する具体的細目について定めた規則のことを言います。
就業規則は、企業・法人と従業員との間のルールブックとなるものです。
そして、企業・法人が適切に労務管理を行うためには、就業規則だけではなく、必要に応じて、次のような労務関連の諸規程を整備することが必要です。

就業規則・労務関連規程の不備により、従業員の懲戒解雇が無効とされて多額の金銭支払を命じられるケース、固定残業代の制度が機能せずに多額の残業代の支払を命じられるケース、従業員による会社情報の持ち出しに対処できないケースなどが発生しています。
法的トラブルによる損害から企業・法人を守るためにも、就業規則・労務関連規程の整備をおろそかにしてはいけません。

雇用管理に関するもの

就業規則(正社員用、契約社員用、パートタイマー用など)
給与規程
退職金規程
慶弔見舞金規程
出張旅費規程
継続雇用(定年退職後)規程
育児介護休業規程
教育訓練規程
安全衛生管理規程
防災管理規程
社有車管理規程
マイカー通勤規程 など

危機管理に関するもの

個人情報保護規程
マイナンバー管理規程
セクシャルハラスメント(セクハラ)防止規程
パワーハラスメント(パワハラ)防止規程
内部通報保護規程 など

労使協定

時間外および休日勤務に関する協定(36協定)
1か月単位/1年単位の変形労働時間制に関する協定
フレックスタイム制に関する協定
事業場外労働に関する協定
裁量労働に関する協定
年次有給休暇の計画的付与に関する協定
賃金控除協定
育児介護休業に関する協定 など

就業規則・労務関連規程の整備の重要性

就業規則・労務関連規程は、企業・法人と従業員全体との間の統一的なルールと、企業・法人の規律を定めるものです。
この点、個々の従業員との間で取り交わす書面として、雇用契約書・労働条件通知書があります。
しかし、雇用契約書・労働条件通知書は個々の従業員との間の契約事項を定めるものであり、企業・法人と従業員全体との間の取り決めを網羅的に盛り込むのは困難なのが通常です。
これに対し、就業規則・労務関連規程は、職場全体の統一ルールブックとして、従業員全体に対して効力を及ぼすものとなります。

就業規則・労務関連規程を整備することは、統一的なルールや規律を明確化することで、職場の規範意識を形成するとともに、職場の一体感を高める効果があります。
また、企業・法人と従業員との間で問題が生じた場合には、就業規則・労務関連規程をベースに、解決方法を考えることになります。
このように、就業規則・労務関連規程は、企業・法人と従業員との間でトラブルのない平時においても、トラブルが発生した場合の対応時においても、重要な意味を持つものなのです。

この点、労働基準法によると、常時10人以上の従業員を雇用する企業・法人は、就業規則の作成が義務付けられています。
そして、この就業規則の作成義務に違反した場合には、罰則の適用があるものと定められています(30万円以下の罰金)。
常時10人以上とは、事業所ごとにカウントし、パートタイマーなどの非正規社員も含むものとされますが、派遣社員や業務委託、臨時社員は含まれません。
常時10人以上の従業員がいる事業所や、近く従業員数が10人に達する事業所については、法律上、就業規則の作成が必須となります。

では、常時10人以上の従業員がいない事業所については、就業規則・労務関連規程を整備する必要はないのでしょうか?
確かに、労働基準法に従うと、法律上、就業規則の作成が強制されることにはなりません。
しかし、統一的なルールや規律を明確化することで、職場の規範意識を形成することや、職場の一体感を高めることの必要性は、10人未満の事業所においても変わりはありません。
法律上の義務というわけではありませんが、10人未満の事業所についても、就業規則・労務関連規程を作成することは必要です。

就業規則・労務関連規程の整備のプロセス

就業規則の整備については、①就業規則の原案の作成、②従業員代表者からの意見聴取、③労働基準監督署への届出、④従業員全員への周知というプロセスを取ります。

就業規則の記載事項としては、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」、定めをする場合には必ず記載しなければならない「相対的必要記載事項」、記載するかどうかが自由である「任意的記載事項」の3つがあります。
このうち、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項については、次のように、法律で記載事項が決められています。

絶対的必要記載事項
①始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項。
②賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算および支払の方法、賃金の締切および支払の時期ならびに昇給に関する事項。
③退職に関する事項(解雇の事由を含む)。
相対的必要記載事項
①退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払の方法ならびに退職手当の支払の時期に関する事項。
②臨時の賃金等(退職手当を除く)および最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項。
③労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項。
④安全および衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項。
⑤職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項。
⑥災害補償および業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項。
⑦表彰および制裁の定めをする場合においては、その種類および程度に関する事項。
⑧前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項。

就業規則の作成にあたっては、すべての記載事項を一つの就業規則にまとめると、条文や記載すべき分量が多くなり、就業規則の利用時に煩雑となることもあります。
そこで、賃金に関する部分を「賃金規程」、退職手当に関する部分を「退職金規程」として作成するなどのように、就業規則の一部を抜粋し、別の規程として作成することも多くあります。
このように、就業規則の絶対的必要記載事項や相対的必要記載事項を別の規程として作成した場合であっても、その各規程は就業規則の一部を構成するものとされますので、就業規則と同様の整備のプロセスを踏む必要があります。

①就業規則の原案の作成においては、厚生労働省の「モデル就業規則」のひな型をそのまま使用している例が散見されます。
しかし、この「モデル就業規則」は、個々の企業・法人の規模や業務内容、労務の実態に合わないことも非常に多く、トラブルが発生した時にまったく対応できないことが少なくありません。
個々の企業・法人の実態に合わせた就業規則を整備することが必要です。
また、法令に違反する就業規則は無効となりますし(そのため、随時、最新の法改正を踏まえた就業規則の見直しも必要となります)、複数の解釈の余地がある不明確な条項や、条項同士で矛盾が生じている箇所などがあれば、トラブルの種となります。
就業規則の作成は、労務問題に精通した弁護士に依頼し、トラブルの予防やトラブル発生時の対応を見据えて、慎重に作成していくのがよいでしょう。
なお、一旦作成した就業規則について、従業員にとって不利益な変更を行う際には、従業員の同意を得るか、変更内容に合理性が認められる必要があります。
このように、就業規則の変更には困難を伴うことがある点にも、十分に注意が必要です。

そして、就業規則については、法律上、②従業員代表者からの意見聴取が義務付けられています。
職場の規範意識を形成するとともに、職場の一体感を高めるという就業規則の目的のためにも、従業員が納得できる内容にすることが大切です。
③労働基準監督署への届出においては、事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出るのが原則であり、従業員代表の意見書を添付することとなります。
さらに、就業規則については、法律上、④従業員全員への周知が義務付けられており、多くの裁判例において、周知がされていない就業規則は無効と判断されています。
周知の方法としては、各事業所の見やすい場所に掲示すること、書面やメールで従業員全員に交付すること、社内のシステムにデータ保存し、従業員全員がアクセスできるようにすることなどが考えられます。

また、労使協定については、従業員代表と書面による取り決めをします。
そして、時間外および休日勤務に関する協定(36協定)、1か月単位/1年単位の変形労働時間制に関する協定など、労働基準監督署に対する届出が必要なものについては、届出を行います。
労使協定についても、届出が必要なものは、事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出るのが原則となります。

弁護士にご相談ください

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当事務所では、地域の企業・法人様から、労務問題に関するご相談・ご依頼を多数お受けしており、トラブルの予防やトラブル発生時の対応を見据えて、就業規則・労務関連規程の整備をお手伝いさせていただくことが可能です。

また、当事務所の弁護士は、これまでに、顧問先の企業・法人様から、就業規則・労務関連規程の整備や変更・改正のご依頼をお受けして、サポートさせていただいた実績も豊富にございます。
個々の企業・法人様からのヒアリングをしっかりと行って、実態に合わせた就業規則・労務関連規程の整備をお手伝いさせていただきます。
さらに、最新の法改正や裁判例の研究も日々行っておりますので、新たに就業規則・労務関連規程の整備を行う場合にも、就業規則・労務関連規程の見直しを行う場合にも、安心してお任せいただけます。
是非一度、当事務所にご相談いただければと存じます。

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