1 はじめに
近年、パワハラ(パワーハラスメント)やセクハラ(セクシャルハラスメント)をめぐる法的トラブルが増加しており、企業・法人にとって大きな悩みの種となることが少なくありません。
パワハラ(パワーハラスメント)とは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為を言います。
セクハラ(セクシャルハラスメント)とは、性的いやがらせを意味し、①対価型セクシャルハラスメント(職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、それを拒否した人に対し、減給、降格などの不利益を負わせる行為)、②環境型セクシャルハラスメント(性的な関係は要求しないものの、職場内での性的な言動により働く人たちを不快にさせ、職場環境を損なう行為)の2つに分類されます。
パワハラ・セクハラの問題が発生すると、企業・法人は、パワハラ・セクハラの被害に遭った従業員から、損害賠償を請求されるリスクがあります。
また、職場でパワハラ・セクハラが行われている場合には、従業員らに対して心理的な悪影響を及ぼし、職場環境を悪化させてしまいます。
その結果、従業員らのモチベーションの低下、業務効率の悪化、優秀な人材の離職などの問題が発生します。
したがって、企業・法人としては、パワハラ・セクハラの問題が発生した場合には、迅速・適切な対応を取っていくことが必要なのであり、パワハラ・セクハラによるトラブルを発生させないための予防策についても、しっかりと講じていかなければなりません。
2 パワハラ・セクハラの問題が発生した場合の対応
(1)事実関係の調査・確認
パワハラ・セクハラの問題が発生した場合には、まずは迅速に事実関係の調査・確認を行うべきです。
被害者からの事実関係の聞き取りにあたっては、被害者が精神的に追い詰められていることに配慮し、細心の注意を払って誠実に対応していくことが必要です。
一方、加害者からの事実関係の聞き取りにあたっては、加害者の名誉感情にも配慮しながら、慎重に進めていくことが大切です。
また、パワハラ・セクハラの当事者だけでなく、関係する従業員への聞き取りが必要となるケースもありますし、聞き取った内容については後々法的トラブルに発展した場合に備えて、記録・証拠として残しておくようにしましょう。
(2)当事者への対応
事実関係の確認の結果、パワハラ・セクハラの事実があったものと認められる場合には、加害者に対して、就業規則に基づく懲戒処分や配置転換などの適切な措置を講じていくこととなります。
被害者に対しては、加害者への処分の内容を報告するとともに、今後の再発防止措置(下記)を徹底することを説明した上で、必要に応じて謝罪などの対応を取ることとなります。
このような当事者への対応を迅速に行うことで、被害者の対立感情を緩和し、紛争の長期化の防止と円満な解決を図っていくことが期待できるのです。
(3)再発防止措置
まずは、事実関係の確認のあと、速やかに加害者と被害者とを隔離し、接触の機会をなくすことが必要です。
しかし、加害者を異動させることのみで足りると判断することは、適切とは言えません。
パワハラ・セクハラが発生する背景には、職場環境の問題があるのだということを踏まえて、再発防止措置を考えていく必要があります。
加害者への再発防止研修の実施、パワハラ・セクハラの防止に向けた社内への啓蒙、コミュニケーション強化や長時間労働対策などの職場環境の改善への取り組みなどが、再発防止策として考えられるでしょう。
(4)損害賠償請求を受けた場合の対応
パワハラ・セクハラの被害を受けたと主張する従業員から、加害者および企業・法人に対して、損害賠償請求が行われる場合があることも想定しなければなりません。
この場合、パワハラ・セクハラの事実が存在しないのであれば、損害賠償責任がないことを前提に、賠償には応じないという対応になるでしょう。
一方で、パワハラ・セクハラの事実が存在する場合には、損害賠償責任があることを前提に、賠償額の交渉に臨むことになるでしょう。
適正な解決を図っていくためには、損害賠償責任を負う事案なのかどうか、請求額が過大ではないかといった点や、裁判になった場合の影響や結果の見通しなどを考慮しながら、交渉に臨むにあたっての方針を考えるようにしましょう。
まずは労務問題に詳しい弁護士にご相談いただいた上で、ご判断いただくことをお勧めします。
【関連コラム】
●ハラスメントをする従業員への対応について
3 パワハラ・セクハラによるトラブルを発生させないための予防策
(1)社内への周知・啓蒙
パワハラ・セクハラについて社内の意識を高めておくことは、トラブルを発生させないための予防策として重要です。
具体的には、企業・法人の経営者が職場からパワハラ・セクハラをなくすべきであることを明確なメッセージとして示すとともに、就業規則の服務規律や懲戒事由などにパワハラ・セクハラ防止の関係事項を盛り込むこと、パワハラ・セクハラの防止に関する社内研修を実施することなどが挙げられます。
(2)相談・解決の場の提供
従業員がパワハラ・セクハラについて相談できるように相談窓口を設置し、相談・解決の場を提供することも、トラブルを発生させないための予防策として有効です。
社内の相談窓口の運営にあたっては、些細な相談でも構わないこと、相談を受けた事項について勝手に調査・確認をしないこと、相談をすることによって査定などで不利益にならないこと、相談者や当事者の秘密を厳守することなどを告知し、従業員が安心して相談窓口を利用できるように取り計らっていくことが大切です。
また、社外の相談窓口を法律事務所(弁護士の事務所)などに委託することなども考えられます(ただし、顧問弁護士の事務所に社外の相談窓口を委託することは、パワハラ・セクハラの相談者・当事者と企業・法人との利害対立の可能性があることから、お勧めできません。社外の相談窓口を法律事務所に委託する場合には、顧問弁護士の事務所以外の法律事務所を選択するべきでしょう)。
4 弁護士にご相談ください
パワハラ・セクハラについてお悩みの企業・法人様がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。
当事務所では、パワハラ・セクハラに関する事実関係の調査・確認、加害者への懲戒処分などのサポート、被害者への対応のサポート、損害賠償請求を受けた場合の示談交渉・訴訟への対応、パワハラ・セクハラの予防策や再発防止策の構築のサポート、社内研修の講師、社外の相談窓口など、充実した法的サービスを提供させていただくことが可能です。
また、当事務所の弁護士は、これまでに、地域の企業・法人様から、パワハラ・セクハラに関するご相談・ご依頼を多数お受けして、解決してきた実績がございます。
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●就業規則等の作成・変更:22万円(税込)~(顧問契約締結の場合は無料または割引)
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着手金:27万5000円~55万円(税込)(顧問契約締結の場合は割引)
報酬金:27万5000円~55万円(税込)(顧問契約締結の場合は割引)
パワハラ・セクハラの解決事例
●製造業 パワーハラスメント(パワハラ)防止の社内向け啓発資料を作成した事例
●製造業 退職した従業員からハラスメントの被害を訴える苦情が発生したのに対し、対応方法に関する助言などのサポートを行った事例
●製造業 ハラスメントリスク対策・予防をテーマとする社内研修の講師を務めた事例
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●労務問題を弁護士に相談・依頼すべき理由