債務者による財産隠しが疑われる場合や、財産隠しを防ぐ手段として、「財産開示手続」および「第三者からの情報取得手続」という制度があります。

財産開示手続について

①財産開示手続制度の概要

債務者の財産の所在・種類について一番把握しているのは、債務者本人です。
この観点から定められたのが、債務者の財産開示手続制度です。
この制度は、債権者の申立てにより、裁判所が債務者を呼び出して、債務者の保有する財産を陳述させる手続です。

この財産開示手続は、金銭債権についての強制執行の申立てをするのに必要とされる、確定判決や和解調書などの債務名義があれば、裁判所に申し立てることができます。
なお、財産開示手続申立時において、債務者の所在が不明であっても、公示送達制度を用いることができるため、債務者の所在が不明であっても、手続を利用することは可能です。

②財産開示手続の流れ

財産開示手続の申立てをすると、裁判所は、債務者を裁判所に呼び出します。
呼び出しを受けた債務者は、定められた期限内に財産目録を作成・提出し、期日に出頭し、裁判所に出頭して自分の財産について陳述しなければなりません。
債権者は、期日において、裁判所の許可を得て債務者に対して質問をすることができます。

なお、債務者がこの財産開示手続の期日を正当な理由なく出頭しない場合や、裁判所に対して虚偽の説明をした場合、制裁として6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることになります。

③財産開示手続において開示される情報

財産開示期日における陳述の時点を基準として、
債務者等の生活に不可欠な衣類・寝具など
債務者等の一か月間の生活に必要な食糧および燃料
を除いた、預貯金・株式・不動産等のすべての積極財産を開示しなければなりません。
これに対し、借金等の消極財産は、開示の対象となりません。

第三者からの債務者財産情報取得手続について

この手続は、債務名義を有する債権者の申立てにより、裁判所が、
預貯金等については銀行等へ
不動産については登記所へ
勤務先については市町村等へ
必要な情報の提供を命令し、これらの者が裁判所に対して書面で回答するという手続です。

ただし、勤務先に関する情報取得手続については、養育費や婚姻費用の支払請求権、人の生命もしくは身体の侵害による損害賠償請求権などの債権者に限定されています。
また、この手続を用いるにあたって、不動産および勤務先に関する情報取得手続については、先に財産開示手続を実施する必要があります。
一方で、預貯金等に関する情報取得手続については、強制執行をしても金銭債権を全額回収することができなかったこと等の要件を満たす必要がありますが、財産開示手続を実施することまでは必要とされていません。

各手続を利用する際の注意点

財産開示手続および第三者からの債務者財産情報取得手続のいずれの手続にも共通する規律として、手続の利用により得た情報を、債権回収のために利用することは許されますが、それ以外の目的のために利用し、又は提供した場合には、30万円以下の過料を支払わなければなりません。
そのため、各手続により得た情報の取り扱いには注意すべきであるといえるでしょう。

最後に

裁判手続等により債務名義を取得しても、実際に回収すべき金銭債権を回収できないと、債務名義は、絵に描いた餅となってしまいます。
債務者財産の調査方法には、ほかにも弁護士会照会制度の利用による方法等もありますので、債務者による財産隠しが疑われる場合や、債務者財産の調査にお悩みの方は、専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。

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