はじめに

企業・法人において、公害による損害賠償の問題が発生することがあります。企業が自社の事業活動によって公害を引き起こしてしまうことや、近隣の企業等が引き起こした公害によって自社が被害を受けることなどが想定されます。このページでは、公害による損害賠償に関する諸問題や差止請求の問題について、ご説明させていただきます。

公害による損害賠償に関する諸問題

過失の要否

公害による損害賠償は、不法行為による損害賠償(民法709条)の一形態です。そして、通常の不法行為であれば、加害者に故意または過失(落ち度)がなければ、損害賠償請求が認められません。一方で、公害のような形態の不法行為については、加害者の故意または過失を要求すれば、被害者の救済が困難であることが問題とされました。

そこで、大気汚染防止法および水質汚濁防止法で、工場または事業場における事業活動に伴う健康被害物質の大気中への排出または有害物質の汚水もしくは廃液に含まれた状態での排出によって、人の生命または身体を害したときは、その排出に係る企業は、その損害の賠償について、故意または過失がなくても責任を負うこととされています。

包括一括請求の可否

公害による損害賠償では、被害者の人数が多数にわたることから、企業側が被害者に対する個別の賠償対応を行うことが難しく、被害者が集団で訴訟を提起する形が取られることが少なくありません。損害賠償請求の訴訟では、本来であれば、個々の被害者が個別に損害を主張・立証しなければならないのが原則です。

しかし、公害による損害賠償の訴訟では、裁判所が多数の被害者について一律に賠償額を認容することがあります。このような損害賠償額の一律認定は、大阪空港訴訟の最高裁判決(最高裁判所昭和56年12月16日判決)で是認されたものであり(全員一律の基準による慰謝料の算定を認めたもの)、多数の被害者が等しく損害を受けてきたものとして、一律の慰謝料を請求する形が取られることがあるのです。

将来の損害賠償請求の可否

公害の発生が将来も継続されることが予測される場合に、将来の損害賠償を請求できるかどうかが問題となります。この点、将来の給付を求める訴訟は、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができるとされています(民事訴訟法135条)。公害による将来の損害賠償請求は、この要件を満たさないため、認められないものと考えられます。

前掲の大阪空港訴訟の最高裁判決では、たとえ同様の行為(公害の発生)が将来も継続されることが予測される場合であっても、それが現在と同様に不法行為に当たるものかどうか、賠償すべき損害の範囲などが流動的であることから、将来の損害賠償請求の権利の成否およびその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができないとして、将来の損害賠償請求が否定されました。

差止請求の可否

継続的な被害を発生させる公害においては、公害の原因となる事業活動の差止請求の可否が問題となることがあります。差止請求については、生命・身体・健康が現に侵害され、または侵害されている場合、または侵害される具体的な危険がある場合には、人格権に基づいて認容される余地があります。もっとも、このような侵害の具体的な危険を立証することには困難を伴うのが通常であるなど、公害に関する差止請求には様々なハードルがあり、実際には却下・棄却される例が多いです。

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