はじめに

弁護士山口龍介

債務不履行とは、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないこと、または債務の履行が不能であることを言います。
債務不履行は契約上の債務の不履行が問題となることが多く、例えば売買契約において売主が売買の目的物を引き渡す債務を履行しないとか、請負契約において請負人が期限内に工事を完成させる債務に違反して工期を遅延させるとか、建物の賃貸借契約において賃貸人が水漏れを修繕する債務の履行を怠るなどのケースが考えられます。
債務不履行責任に基づく損害賠償の問題は、契約をめぐる法的トラブルとして数多く発生しています。

債務不履行責任に基づく損害賠償の要件

債務不履行責任に基づく損害賠償の請求が認められるためには、債務不履行があること、債務者の責に帰すべき事由があることが必要です。
また、損害賠償を請求する権利は、一定の期間の経過によって消滅する時効の問題があります。

債務不履行

債務不履行は、履行遅滞、不完全履行、履行不能の3つに分類されます。

履行遅滞とは、債務を履行する期限内に履行をしないことを言います。
例えば、契約の目的物の納期・返還期限や代金の支払期限の遅れです。

不完全履行とは、債務の履行がなされたものの、完全なものではなかったことを言います。
例えば、貨物運送の契約において、目的地までの運送自体は行ったものの、ドライバーが貨物を乱暴に取り扱ったために、貨物が破損してしまった場合には、不完全履行に当たります。

履行不能とは、債務の履行が不可能なことを言います。
例えば、売主が不動産を二重売買し、一方の買主に所有権移転登記をしてしまえば、他方の買主に所有権移転登記をする債務の履行が不可能となります。

帰責事由

債務不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責に帰することができない事由によるものであるときは、損害賠償を請求することができません。
例えば、不可抗力(転変地変その他人間の力ではどうすることもできない事象)によって債務不履行が発生した場合には、損害賠償の責任を免れます。
ただし、金銭の支払債務については、不可抗力を理由として損害賠償の責任を免れることはできませんので、注意が必要です。

また、債権者による履行の妨害によって債務不履行の場合にも、債務者の責に帰することができないと言うべきですから、損害賠償の責任を免れることとなります。

時効

債務不履行責任に基づく損害賠償を請求する権利は、①権利行使ができることを知った時から5年間(人の生命または身体の侵害による損害賠償の請求については10年間)、または②権利行使ができる時から10年間(人の生命または身体の侵害による損害賠償の請求については20年間)を経過すれば、時効によって消滅します。

損害賠償額

債務不履行責任に基づく損害賠償の範囲は、債務不履行によって通常生ずべき損害(通常損害)であるとするのが原則です。
そして、特別の事情によって生じた損害(特別損害)であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、その損害も賠償請求の対象となります。

通常損害とは、例えば、契約の目的物の滅失であれば時価相当額、賃貸借の目的物の不返還であれば賃料相当損害金、金銭の支払の遅延であれば遅延利息などです。
特別損害とは、例えば、不動産の売買において、売主の債務不履行によって、買主が転売利益を失った場合などです。
そして、買主が不動産会社であるとか、不動産が投資物件であるなどの場合には、転売目的を予見すべきと言えますから、転売利益の賠償請求が認められることとなります。

また、契約上の債務の不履行のケースでは、損害賠償の範囲について、契約書の中に「違約金を〇万円とする」、「委託料の〇か月分を上限とする」、「現実かつ直接に生じた通常の損害に限る」などの条項が置かれていることがあります。
このような取り決めがあるときは、損害賠償の範囲はそれに従うのが原則となりますが、消費者契約法などの強行法規に違反する場合や、著しく過大または過少な金額・範囲である場合などには、取り決めが無効とされることもあります。

そして、債務不履行または損害の発生・拡大に関して債権者に過失(落ち度)がある場合には、これを考慮して損害賠償額が減額されることがあります(過失相殺)。
また、債権者が損害を被ったのと同じ原因で何らかの利益を受けた場合には、その利益が損害賠償額から控除されることとなります(損益相殺)。

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