はじめに

不法行為責任に基づく損害賠償の問題は、契約関係の有無にかかわらず、他人の権利や利益を侵害した場合に発生します。
企業・法人に発生する損害賠償の問題は、不法行為責任を根拠とするものが少なくありません。
不法行為は、一般の不法行為と特殊の不法行為に分類されるところ、以下では、これらの不法行為の概要および損害賠償額について、ご説明させていただきます。

一般の不法行為

一般の不法行為とは

故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うものとされています(民法709条)。
これを一般の不法行為と言います。

一般の不法行為の要件

一般の不法行為責任に基づく損害賠償の要件としては、故意または過失、他人の権利または法律上保護される利益の侵害が挙げられます。
また、損害賠償を請求する権利は、一定の期間の経過によって消滅する時効の問題があります。

故意または過失

故意とは、一定の結果が生ずるべきことを認識または予見しながら、それを意図し、または認容するという心理状態のことを言います。
平たく言えば、「わざとやった」ということです。
過失とは、損害の発生が予見可能であり、それを回避するべき義務があったにもかかわらず、それを怠ったことを言います。平たく言えば、不注意ということです。

他人の権利または法律上保護される利益の侵害

他人の権利または法律上保護される利益の例としては、生命・身体、財産、名誉・信用、プライバシーなどがあります。
これらの権利や利益を故意または過失によって侵害した場合には、一般の不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

時効

不法行為責任に基づく損害賠償を請求する権利は、①被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間(人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償の請求については5年間)、②不法行為の時から20年間を経過すれば、時効によって消滅します。

特殊の不法行為

特殊の不法行為としては、使用者責任(民法715条)、注文者の責任(民法716条)、土地の工作物の占有者等の責任(民法717条)などがあります。
これらの特殊の不法行為に該当する場合には、損害賠償の請求が認められます。

使用者責任

ある事業のために他人を使用する者(企業・法人)は、被用者(従業員)がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うものとされています。
そして、使用者が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずるべきであったときは、損害賠償の責任を負わないものとされていますが、使用者の免責はほとんど認められません。これを使用者責任と言います(民法715条)。

従業員の行為について、企業・法人が使用者責任に基づく損害賠償の請求を受けることは、非常に多い紛争類型です。

注文者の責任

注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わないのが基本ですが、注文または指図について過失があった場合には、損害賠償の責任を負うものとされています(民法716条)。

土地の工作物の占有者等の責任

土地の工作物の設置または保存に瑕疵(安全性を欠く状態)があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負うものとされています。
そして、占有者が損害の発生を予防するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないものとされています(民法717条)。

損害賠償額

債務不履行責任に基づく損害賠償の範囲は、不法行為によって通常生ずべき損害(通常損害)であるとするのが原則です。
そして、特別の事情によって生じた損害(特別損害)であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、その損害も賠償請求の対象となります。

例えば、不法行為によって物が滅失した場合には、その物の時価相当額が通常損害として賠償の対象となります。
一方で、その物の価格が高騰しており、将来売却して得られたはずの利益の賠償を求めるのであれば、特別損害に当たります。
そのため、被害者において高騰した価格で売却して利益を確実に取得できたであろうという特別の事情があり、その事項が加害者において予見すべきであったと認められなければ、賠償の対象となりません。

そして、損害の発生・拡大に関して被害者に過失(落ち度)がある場合には、これを考慮して損害賠償額が減額されます(過失相殺)。
また、被害者が損害を被ったのと同じ原因で何らかの利益を受けた場合には、その利益が損害賠償額から控除されることとなります(損益相殺)。

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