はじめに

ネットでの誹謗中傷や風評被害に遭った場合、問題のある投稿を行った投稿者に対して、法的な責任を追及していくことが考えられます。
法的責任の追及にあたっては、民事上の賠償請求を行う方法(損害賠償請求)と、刑事上の刑事責任を追及する方法(刑事告訴)の2通りが考えられます。

民事上の責任追及(損害賠償請求)

民事上の責任追及としては、問題となる投稿によって被った損害の賠償を求めていくことになります。
民事上の損害賠償請求を行うためには、その前提として、問題のある投稿を行った投稿者の氏名や住所が判明している必要があります。
そのため、匿名の掲示板での投稿などのように、投稿者の情報が分からない場合には、発信者情報開示請求によって、投稿者の情報を確認しておく必要があります。

損害賠償の請求では、精神的苦痛に対する慰謝料の賠償を求めることになります。
慰謝料の金額は、問題となる投稿の内容や実際に生じた影響の内容などの事情によって変動します。
これまでの裁判例を踏まえると、訴訟となった場合、慰謝料の金額は100万円程度の金額が上限とされているような印象を受けます。
そのため、訴訟となったとしても、そこまでの高額な賠償までは認められないところです。

また、損害賠償の請求にあたっては、慰謝料の他に、投稿者の特定に要した費用の賠償を求めることも考えられます。
裁判例では、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行った場合、その弁護士費用を損害として認めたケースもあります。

刑事上の責任追及(刑事告訴)

刑事上の責任追及としては、捜査機関に対して告訴を行い、問題となる投稿を行った投稿者の処罰を求めていくことになります。
刑事上の処罰を求めるためには、問題となる投稿を行ったことが犯罪に該当することが必要となります。
誹謗中傷や風評被害が生じる投稿については、例えば、脅迫罪や名誉棄損罪、偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪、信用棄損罪などの犯罪に該当するかどうかを検討する必要があります。

告訴を行うためには、告訴状を作成し、問題となる投稿が犯罪に該当するという事実を具体的に記載した上で、その事実を裏付ける根拠となる資料を証拠として添付して、捜査機関に提出する必要があります。
その後、捜査機関が告訴を受理すれば、捜査が進められ、投稿者に対して刑事処罰が下される可能性もあります。

もっとも、残念ながら、ネット上での被害については、捜査機関が告訴を受理しないことも多くあり得るところです。
犯罪に該当する可能性のある投稿がなされた場合、本来であれば、捜査機関は告訴を受理して捜査を行い、犯人を特定して、刑事処罰を求めるのが理想的です。
しかしながら、投稿者が特定されていなければ、そもそも告訴を受け付けてくれないことも多いです。
また、投稿の内容の問題性がそこまで大きくない場合や、実際に生じた影響が小さい場合にも、告訴を受け付けてくれないことが多くあります。
したがって、告訴を受理してもらうためにも、できるだけ豊富に証拠を収集して、投稿者が特定されていることや、その投稿が犯罪に該当する可能性が高いこと、その投稿によって大きな支障が生じていることを、告訴状の中で説得的に論じていく必要があります。

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