はじめに

企業・法人の自己破産では、代表者等が企業・法人の銀行融資等の債務の連帯保証人になっているケースがほとんどです。
そうなると、連帯保証債務を負う企業代表者・連帯保証人についても、企業・法人と同時期に自己破産の申立てをしなければならないのが通常です。

その場合には、企業・法人の自己破産の手続と、企業代表者・連帯保証人の自己破産の手続とは、並行して進められますが、手続が終結する時期は異なることが少なくありません。
しかし、企業代表者の自己破産の手続が先に終結したとしても、企業代表者等は企業・法人の自己破産の手続終結までの間、破産管財人の調査等に協力しなければなりません。
また、企業代表者は、企業・法人の自己破産に係る裁判所での債権者集会に、毎回出席するのが原則です。

企業代表者・連帯保証人の自己破産については、同時破産廃止という簡略化された手続で終結することもありますが、多くは裁判所が破産管財人を選任する管財事件となります。
このページでは、企業代表者・連帯保証人の自己破産が管財事件となった場合の手続について、ご説明させていただきます。

自由財産の拡張

企業・法人が自己破産によって消滅するのに対し、企業代表者・連帯保証人には自己破産後の生活があります。
自己破産の手続では、破産者の財産が換価(売却・処分)され、債権者への配当に回されるのが原則ですが、企業代表者・連帯保証人の名義の財産については、一定の範囲で手元に残すことが可能です。

まず、家具、家電、衣類などの生活必需品、その他一定範囲の動産類については、自己破産の手続によって処分されてしまうことはありません。
また、破産開始決定後に新たに取得した財産については、自己破産の手続における換価の対象となりません。
さらに、現金・預貯金、自動車、生命保険の解約返戻金など一定の類型の財産について、合計99万円までを手元に残せる制度があります。
この制度のことを、自由財産の拡張と言います。

企業代表者・連帯保証人の自己破産の手続では、どの範囲の財産を手元に残すことができるのかを精査し、自由財産の拡張の制度を活用するなどして、自己破産後の企業代表者・連帯保証人の生活の安定を図ることが大切です。

なお、企業代表者・連帯保証人の手元に残せるのは、あくまでも企業代表者・連帯保証人の個人名義のものだけです。
自己破産する企業・法人の名義の財産について、換価の対象外となる財産や自由財産の拡張のような制度はありません。
企業・法人の名義の財産については、手元に残すことはできないのが原則です。

財産の換価・配当

企業代表者・連帯保証人の手元に残すことができない財産については、破産管財人による換価(売却・処分)が行われます。
一方で、抵当権が設定された不動産は、抵当権者が申し立てた競売で落ちて終わりというケースも多くあります。
そして、財産の換価によって集められた金銭は、破産管財人の職務に係る必要経費や報酬に充てられたあと、公租公課(滞納税金等)などの優先的な債権への弁済、一般の債権(企業・法人の負債の連帯保証債務、貸金業者からの借入など)への配当の順に回されることとなります。

実際には、企業代表者・連帯保証人の財産に資産価値のあるものがなく、財産の換価によって十分な金銭が集まらなかったために、破産管財人の職務に係る必要経費や報酬だけで終わり、債権への弁済・配当が行われないというケースも少なくありません。
また、一定の財産的価値のあるものであっても、破産管財人が換価困難と判断して、放棄することがあります。
この場合、破産管財人が放棄した財産については、企業代表者・連帯保証人の手元に残ります(ただし、抵当権が設定された不動産を破産管財人が放棄したとしても、抵当権が付いている以上は、手元に残すことができないのが通常です)。

免責(債務の免除)の調査

企業代表者・連帯保証人が自己破産後に経済的に更生し、平穏な生活を送れるようにするためには、免責(債務の免除)を受ける必要があります。
免責については、企業・法人が経営破たんした結果、企業代表者・連帯保証人が多額の連帯保証債務の負担に耐えられないという典型的な事案では、問題なく認められるのが通常です。

しかし、財産隠しを図ったとか、自己破産手続において虚偽の申告をしたとか、破産管財人の調査に協力しなかったなど、一定の事由に該当する場合には、免責が許可されないこともありますので、注意が必要です。
もっとも、実際には、免責が不許可となるのは相当悪質な事案に限られており、余程のことがなければ免責が許可されるのが通常です。

弁護士にご相談ください

企業・法人の自己破産では、企業代表者・連帯保証人の自己破産の手続も含めて、多くの事項を適正・迅速に処理していかなければなりません。
企業・法人の自己破産に精通した弁護士にご依頼いただくことをお勧めいたします。

当事務所の弁護士は、これまでに、企業・法人の自己破産の案件を多数取り扱って参りました。
自己破産の申立てを検討されている企業・法人様がいらっしゃいましたら、お早めに当事務所にご相談ください。

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当事務所の企業破産に強い弁護士の対応料金

●初回相談料:無料
●企業破産の依頼
着手金:55万円~165万円(税込)
報酬金:0円
※明渡し未了の営業所などが複数ある場合、解雇未了の従業員が10名を超える場合、債権者数が30名を超える場合など、特別な事情がある場合には着手金を165万円~330万円(税込)とさせていただくことがあります。

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