はじめに

企業・法人の自己破産においては、企業・法人の代表者のほか、従業員、債権者など、多くの関係者がいるのが通常であり、これらの関係者に対して多大な影響を及ぼすこととなります。
また、企業・法人の代表者としては、家族・親族への影響も気になるところでしょう。
以下では、企業破産による関係者への影響について、ご説明させていただきます。

企業破産による関係者への影響

代表者への影響

企業・法人の負債について、代表者が連帯保証人となっているケースは多くあります。
金融機関からの融資がある場合には、企業・法人の代表者が連帯保証人となっているのが通常です。
そのため、企業破産においては、連帯保証人となっている代表者も個人の自己破産をしなければならないのが基本です。

企業・法人の代表者が自己破産をする場合には、代表者の個人の財産については、一定限度までの現金・預貯金や生命保険、自動車などを手元に残すことが可能ですが、不動産などは売却・競売の対象となるのが通常です。
この点、自己破産の申立前に、代表者の家族・親族に自宅を売却することも考えられますが、相場より低額で売却するなど、破産管財人が公平・構成を害するものと判断すれば、後々取り戻されるなどの混乱を招くことがあるため、慎重な判断が必要となります。
また、自宅を家族・親族に移転する財産隠しを行った場合には、同様に、破産管財人によって取り戻されてしまうことがあるうえ、免責(借金の免除)が許可されないおそれが出てきますので、ご注意ください。

そして、破産手続中においては、破産管財人の調査への協力義務を負うほか、住所変更には裁判所の許可が必要となり、生命保険外交員や警備員など一定の業務に就くことができないなど、一定の義務・制約に服することになります。

代表者の家族・親族への影響

企業・法人の代表者の家族・親族が、企業・法人の負債の連帯保証人となっている場合には、上記と同様に自己破産をしなければならないのが基本となります。
また、連帯保証人となっていない場合であっても、企業・法人の債務について、代表者の家族・親族の不動産に抵当権が設定されていれば、その不動産は競売の対象となるのが通常です。

このように、企業・法人の負債の連帯保証人になっているとか、不動産に抵当権が設定されているなどの関係になければ、代表者の家族・親族が財産を失うことはありません。
ただし、代表者の家族・親族が、代表者が所有する自宅に居住している場合には、代表者が自己破産によって自宅を失うことになる結果、自宅から引っ越さなければならないことが考えられます。

また、上記のとおり、代表者の所有する財産を家族・親族に移転する財産隠しを行った場合には、後々、破産管財人によって取り戻されてしまうことなどもありますので、ご注意ください。
これに関連して、代表者による財産隠しが疑われる場合などには、破産管財人が代表者の家族・親族に対して様々な照会や調査を行うこともあります。
そのため、代表者の家族・親族が所有する財産などについても、破産管財人に対する一定の報告が必要となる場合もあります。

従業員への影響

企業破産においては、事業の停止に伴って、最終的に従業員を解雇しなければなりません。
しかし、自己破産の申立ての準備段階で企業破産の情報が広がってしまうと、大きな混乱を招く可能性が高いです。
そのため、準備段階では通常の営業を継続し、事業停止日に自己破産の申立てを行う旨を従業員に説明し、解雇を通告する形を取るケースが多いです。

解雇する従業員に対しては、解雇予告手当として1か月分の賃金に相当する金額を支払ったうえで、即日解雇するのが原則です。
また、解雇日までの労働に対する賃金についても、同様に支払わなければなりません。
一方で、従業員への解雇予告手当や賃金を支払うための資金がないという場合もあります。
このような場合には、従業員への支払を行わずに自己破産の申立ての準備を進めていくことになります。
もっとも、従業員の未払い賃金については、独立行政法人労働者健康福祉機構から額面の8割の立替払いを受けられる制度があります。
未払い賃金の立替払い制度を利用する必要がある場合には、従業員に対して制度の概要を十分に説明したうえで、スムーズに制度の適用を受けることができるように、早期の自己破産申立てを目指すこととなります。

なお、事案によっては、企業・法人の資料の収集や帳簿の整理などのため、事業停止日のあとも、一部の従業員について引き続きアルバイトを依頼することもあります。
また、会社の規模が大きく、廃業による社会的な影響が大きい場合には、自己破産の申立後も、破産管財人が裁判所の許可を得て営業を継続するケースがあります。
このようなケースでは、破産管財人によって従業員の雇用が継続され、破産管財人から賃金が支払われることになります。

債権者への影響

企業・法人の自己破産においては、債権者への支払はストップされ、破産管財人が賃借物件の明渡しや企業・法人の財産の売却・処分、その他の管財業務を完了したあと、相応の規模の原資が確保された場合には、配当を受けることができます。
一方で、債権者への配当を行うに足りるだけの資金が形成できなかった場合には、債権者への配当がないままに企業破産の手続が終了します。

自己破産の手続においては、公租公課(税金)や従業員の賃金などのように優先的に支払を受けられる債権もあり、そのような優先的な債権に対しては弁済・配当が行われるものの、金融機関や取引先などの一般の債権者に対しては配当が回らないというケースも少なくありません。

なお、企業破産において、金融機関や取引先、従業員などのほかに、代表者や家族・親族、友人・知人などから借入があるというケースも見られます。
このようなケースで、家族・親族や友人・知人には迷惑を掛けたくないから、自己破産の申立前に弁済してしまおうとお考えになる方もいらっしゃいます。
しかしながら、自己破産の手続において、各債権者は平等に取り扱われなければなりません。
このように、特定の債権者だけを優先して支払をしてしまうと、後々、破産管財人によって取り戻される可能性があります。
手続上の混乱を招く原因となりますので、ご注意ください。

弁護士にご相談ください

以上のように、企業・法人の自己破産においては、関係者に対して多大な影響を及ぼすこととなり、注意すべきポイントが多々あります。
事案ごとの個別的事情に応じて、手続への対応方針を慎重に精査・検討する必要があるため、企業破産の手続に精通した弁護士にご相談・ご依頼いただくのがよいでしょう。
当事務所の弁護士は、これまでに、様々な企業・法人の自己破産の事案に対応して参りました。
自己破産に関することでお悩みの企業・法人様がいらっしゃいましたら、お早めに当事務所にご相談ください。

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当事務所の企業破産に強い弁護士の対応料金

●初回相談料:無料
●企業破産の依頼
着手金:55万円~165万円(税込)
報酬金:0円
※明渡し未了の営業所などが複数ある場合、解雇未了の従業員が10名を超える場合、債権者数が30名を超える場合など、特別な事情がある場合には着手金を165万円~330万円(税込)とさせていただくことがあります。

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