この記事を書いた弁護士

弁護士・木村哲也
代表弁護士

主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。

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1 はじめに

取締役等の役員が不祥事を起こした場合、会社としてはどのように対処するべきでしょうか?
不祥事が発覚してからの対応の流れ、不祥事を起こした役員の処分など、対処にお困りの企業様もいらっしゃるかもしれません。

このコラムでは、役員が不祥事を起こした場合の対応と役員の処分について、企業法務に強い弁護士が解説いたします。

2 役員が不祥事を起こした場合の対応

(1)事実関係の調査

役員が不祥事を起こした場合の初動対応として、まずは事実関係の調査を行うこととなります。
不祥事の内容を適切に把握しなければ、その後の対応が全て不適切なものとなってしまうおそれがあります。

事実関係の調査は、関係者に対する聞き取りと、その内容を裏付ける資料の収集を行うのが基本となります。
後々トラブルになった場合に備えて証拠として確保しておくことが重要ですので、関係者に対する聞き取りでは録音や議事録を残しておくべきですし、収集した資料は厳重に保存するようにしましょう。

(2)役員の処分

調査により明らかになった事実関係を踏まえ、不祥事を起こした役員の処分を検討・実施することとなります。
役員に対する処分の内容や注意点については、後述いたします。

(3)再発防止措置

役員の処分と並行して、発生した不祥事の原因解明と再発防止のための対策を検討・実施します。
具体的な再発防止措置の内容はケースバイケースとなりますが、例えば、業務内容の見直し、役員に対する研修、内部通報制度の整備、弁護士等によるリーガルチェックなどが考えられます。

3 役員が不祥事を起こした場合の処分

(1)解雇・懲戒処分

会社と役員との関係は、雇用契約ではなく委任契約です。
そのため、会社との雇用契約を前提とする解雇や懲戒処分は、役員に対しては行えないのが基本となります。

一方で、役員であると同時に従業員として業務に従事する「使用人兼務役員」については、解雇や懲戒処分を行うことができます。
使用人兼務役員に当たるかどうかは、会社と役員が「使用従属関係」にあるかどうかが判断基準になります。
その判断においては、①会社からの指示等に対する諾否の自由があるかどうか、②勤務場所・勤務時間等の指定・管理の有無や人事考課・勤怠管理を受けているかどうか、③会社から受領する報酬の名目・内容・金額等が従業員と同質かどうか、④代表取締役や役付取締役か平取締役か、⑤担当業務が従業員の職務と同質かどうか、⑥その役員の態度・待遇や他の従業員の認識がどうか、⑦雇用保険等の適用対象になっているかどうか、⑧服務規律を適用されているかどうか、などの事情を総合的に考慮して判断されます(東京地方裁判所平成10年2月2日判決)。

ただし、解雇や懲戒処分を行う場合には、トラブルを回避するために、法的なルールを踏まえて進めることが大切です。
特に解雇はトラブルのリスクが高いため、任意の退職を求める退職勧奨も有力な選択肢となり得ます。

【関連記事】
●懲戒処分
●解雇
●退職勧奨

なお、使用人兼務役員は、従業員であると同時に、役員でもあります。
解雇や退職勧奨により雇用関係を解消しても、委任関係に基づく役員としての地位まで失わせることにはなりません。
役員としての地位からも退かせるためには、次に説明する辞任・解任によることとなります。

(2)辞任・解任

繰り返しになりますが、会社と役員の関係は委任契約であるため、役員は会社との雇用契約を前提とする解雇や懲戒処分の対象とならないのが基本です。
また、使用人兼務取締役についても、解雇や退職勧奨により雇用関係を解消しても、委任関係に基づく役員としての地位から退けたということにはなりません。
そのため、役員に対する処分については、従業員に対する処分とは別の枠組みで考えなければなりません。

役員が重大な不祥事を起こした場合には、役員としての地位を奪う処分を検討することとなります。
この場合、まずは不祥事を起こした役員に対し、任意の辞任を促す辞任勧告を行うことが考えられます。

これに対し、不祥事を起こした役員が辞任を拒否した場合には、株主総会の決議による解任の手続に移行することになるでしょう。
法律上、役員は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができるとされています(会社法339条1項。なお、代表取締役等の一存で解任することはできず、株主総会の決議を経る必要があります)。
しかし、解任された役員は、解任について正当な理由がない場合には、会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求することができるとされていますので(会社法339条2項)、解任に値する根拠および証拠を十分に整理しておくことが重要です。

なお、不祥事を起こした役員の任期満了が近い場合には、任期満了まで待ったうえで再任をしないという対応も考えられます。

(3)役員報酬の減額

役員が起こした不祥事が辞任・解任に値するほど重大ではなくとも、何らかの制裁を与える必要がある場合には、減俸(役員報酬の減額)を検討するというケースもあるでしょう。

ただし、注意しなければならないのは、「一度決められた役員報酬の金額は会社と役員の契約事項となっている」ということであり、原則として会社が一方的に役員報酬を減額することはできないと考えられています。
このような原則のもと、トラブルを回避するため、不祥事を起こした役員の同意を得て、「役員報酬の(一部)自主返納を受ける」という形で処理するケースが多いように見受けられます。

役員報酬の(一部)自主返納を受ける場合には、不祥事を起こした役員から「不祥事の事実を認め、役員報酬を(一部)自主返納する」という内容の会社宛ての同意書面を差し入れさせるなど、後々「一方的に減俸された」などと言われないように対策を講じておきましょう。

(4)損害賠償請求

役員の不祥事により会社が損害を被った場合には、その役員に対する損害賠償請求を検討することとなります。

役員は、その任務を怠って会社に損害を与えた場合には、会社に対して損害賠償責任を負うものとされています(会社法423条1項)。
役員が不正行為に直接関わっている場合のほかに、不正行為に関する監督を怠っていた場合、不正行為の判明後の事後対応を怠ったために損害を拡大させた場合なども、役員の損害賠償責任が認められます。

損害賠償請求においては、会社が被った損害額を証拠資料に基づいて算出し、問題の役員に対して書面により請求を行うのが基本です。
そして、話し合いによる解決が難しければ、民事訴訟などの法的措置により解決を図ることとなるでしょう。

(5)刑事告訴

役員の不祥事が犯罪行為に該当し、その内容が悪質である場合、あるいは被害額が大きく回収が困難な場合などには、刑事告訴を検討することもあります。

刑事告訴を行う事例としては、業務上横領罪や特別背任罪が成立するケースが代表的です。
例えば、役員が会社の金銭を使い込んでいたような場合には業務上横領罪が成立し、役員の関係者が経営する会社が経営不振であることを知りながら融資を行ったような場合には特別背任罪が成立する可能性があります。

捜査機関に対して犯罪被害を届け出る方法としては、被害届の提出と刑事告訴が考えられます。
もっとも、窃盗・詐欺や暴行・傷害のような単純な犯罪では、被害届の提出で足りることも少なくないのですが、業務上横領罪や特別背任罪のような会社における複雑な経済的犯罪については、刑事告訴を行わなければ捜査を進めてもらえないことも多いのが実情です。

刑事告訴を行うに当たっては、証拠となる資料を整理したうえで、役員が具体的にどのような行為をし、その行為がどのような犯罪に該当するかを的確に説明した「告訴状」という書面を作成し、捜査機関に対して提出する必要があります(法律上、刑事告訴は口頭で行うことも可能とされていますが、口頭による告訴はあまり現実的ではありません。捜査機関に対して捜査の端緒を示し、円滑な捜査開始を促すためにも、証拠資料を添付して告訴状を提出する形で刑事告訴を行うのが基本となります)。

なお、刑事告訴を行うに当たっては、会社として捜査に協力する負担が生じること、刑事事件として報道されることにより会社の社会的信用が低下するリスクがあることなどが想定されますので、相応の覚悟が必要となります。

【関連コラム】
●刑事告訴・刑事告発のポイント

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記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2026年5月18日

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