弁護士・神琢磨
八戸シティ法律事務所 在籍

主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。

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1 横領とは

横領とは、大まかな意味としては、他人の金品を不法に領得(着服)する行為です。
企業においては、従業員・役員が会社の預金を不正に引き出したり、架空請求・水増し請求を行って代金を着服したり、売上金を着服したりするケースが典型と言えるでしょう。

厳密には、行為の具体的内容や当該従業員の地位によって、「単純横領罪」「業務上横領罪」「背任罪」「窃盗罪」「詐欺罪」などの成立が考えられますが、このコラムでは、上述したような従業員・役員等の行為をまとめて「横領」と表記します。

2 会社の対応①:懲戒処分

横領とは会社との信頼関係を破壊する重大な行為ですので、対応としては、懲戒処分を行うことが考えられます。

懲戒処分にも軽重がありますが、横領を行った従業員を信頼して雇用し続けることは難しいですし、会社として、このような背信性の高い行為には毅然とした対応が望まれることから、懲戒解雇を選択する場合が多いでしょう。
懲戒解雇は、一般にはその有効性が問題となりますが、横領が理由であれば、解雇として有効と判断されやすい傾向にあります。

●懲戒処分

3 会社の対応②:損害賠償請求

次に、横領されたことによる損害を回復させるため、損害賠償請求を行うことが考えられます。
横領をしたことが明らかであれば、法的に、これを返還する必要があることは当然です。
その方法としては、当該従業員・役員との間で示談書を取り交わして支払わせるか、これに応じない場合は訴訟などの裁判所の手続きを取ることになります。

横領をした従業員・役員に預貯金や不動産といった資産があれば、示談によって任意に支払わせたり、訴訟を起こして強制執行によって回収したりすることが期待できます。
他方で、横領した従業員・役員は、横領した財産をすでに消費している場合も多いと思われます。

この場合の対策・対応としては、
・分割払いの合意をし、他社に再就職後の給与から支払わせる(この場合、懲戒解雇を行うと再就職が難しくなるので、自主退職という形をとるのがよいでしょう。)
・中小企業退職金共済(中退共)に加入している場合、中退共から支払われる退職金から支払わせる(この場合も、懲戒解雇だと退職金が減額されるため、自主退職という形をとることがよいでしょう。)
・被害が少額であれば、合意書取り交わしのうえ、支給予定の給与との相殺をする(給与は全額支払いが原則のため、一方的に相殺をすることができず、合意書の取り交わしが必要になります。)
・入社時に身元保証人を立てさせておいて、身元保証人に対して請求を行う(ただし、令和2年4月施行の民法改正により身元保証が有効となる要件・範囲が限定されましたので、注意が必要です。)
などが考えられます。

4 会社の対応③:刑事告訴

横領行為は、態様によって、横領罪またはその他の犯罪にあたります。
そのため、これに対する処罰を求めるため、刑事告訴をすることが考えられます。

刑事告訴のメリットとしては、
・他の従業員に毅然とした対応を示すことができる
・捜査によって新たな証拠が見つけられる場合もある
・被害弁償が刑事処分において有利に働くことから、横領をした従業員等が被害弁償に応じやすい
といったところが挙げられます。

他方で、
・被害者側も取り調べ等に協力する負担がある
というのはデメリットと言えるでしょう。

5 会社の対応④:役員の解任・辞任

横領を行ったのが役員であれば、役員の解任を検討することになります。
役員が横領の事実を認めているのであれば、自主的に辞任してもらうのが手続的には簡便でしょう。

6 従業員・役員による横領が疑われる場合の対応の流れ

(1)事実関係の確認

横領があったと疑われる場合、まずはその裏付けとなる証拠を収集するなどして、事実関係を確認する必要があります。
なぜなら、証拠が不十分な状態で横領をした従業員・役員に事情を聞いても、横領の事実を否定することが予想されますし、かえって証拠を隠滅する機会を与えかねないからです。

収集すべき証拠は、横領の態様によって異なりますが、典型的には、
・不正請求を行った場合の請求書
・売上金の一部を着服し、売上を過少申告した場合の金額の異なる領収証
・社内の現金や物を盗んだ場合の防犯カメラ
・横領の事実を裏付ける他の従業員・顧客等の供述
などが挙げられます。

(2)従業員・役員本人からの事情聴取

できるだけ証拠が揃った時点で、従業員・役員本人から事情聴取を行います。
証拠を十分に揃えていれば、言い逃れできずに横領を認める可能性が高くなります。

そして、このような本人の自白は有力な証拠となることから、会話は録音しておくこと、また、その場で横領を認める内容を含む合意書などの書面を取り交わしておくことが重要です。
なぜなら、その場では横領を認めていても、のちに発言を翻すのはよくあることだからです。

(3)具体的な対応の検討

この段階で、具体的な対応を検討することになります。
なぜなら、横領の事実の裏付けが不十分だと、懲戒解雇の効力が争われ無効となったり、損害賠償請求訴訟で不利になったり、刑事処分が課されなかったりする可能性が高いからです。

実際に①懲戒処分、②損害賠償請求、③刑事告訴のそれぞれを行うかは、被害金額や会社の方針、横領行為の態様、回収可能性などを踏まえて、何を重視するかによるでしょう。

7 従業員・役員による横領の事前防止対策・再発防止策

まずは横領をすることのないような従業員・役員を雇用・選任するのが一番ですが、これには限界があります。
そのため、従業員・役員による横領の対策としては、横領ができない環境を作ることが現実的です。

横領行為には様々なものがありますが、
・従業員や役員が一人で会社の預金や売上金に接触できたために持ち逃げされてしまう
・架空請求や水増し請求を駆使してひそかに領得されてしまう
といったケースが警戒されるところです。

これを防止するためには、会計業務に際し、できるだけ複数人が関わる体制を整えることが有効でしょう。
具体的には、
・経理に複数の担当者を置く
・定期的な人事異動により、不正を隠しにくくする
・出金の際に上司の承認が必要となる運用にする
・通帳や帳簿を経理担当者以外が定期的に確認する機会を設ける
・従業員が一人で高額な売上金を保持する状況を作らない
などの対策が考えられます。

そして、万一横領が起きてしまったら、
・具体的な態様に応じて、同種の横領を不可能にするための対策をする
・横領行為に対し、懲戒処分などを適切に行って毅然とした対応を示す
といった対策をして再発防止に努めることになります。

8 弁護士にご相談ください

狡猾に行われる横領行為は、入念な準備のもとで進めないと、言い逃れされたり、証拠を隠されたり、逃亡されたりする可能性があります。
そのため、できるだけ早い段階で、専門家のアドバイスを聞きながら対応を進めるのがよいでしょう。
社内で横領が発覚した場合には、当事務所にご相談いただければと存じます。

記事作成弁護士:神琢磨
記事更新日:2023年11月7日

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