1 製造業においてよくある労災トラブル
厚生労働省の統計によると、製造業における労働災害の種類としては、例年、「はさまれ・巻き込まれ」が最も多く、次いで「転倒」が多く発生しています。
「はさまれ・巻き込まれ」が多いのは製造業における労災の特色です。
製造業では危険を伴う機械を使用した作業が多いため、作業中に機械にはさまれたり巻き込まれたりといった労災が発生しやすい傾向にあります。
「転倒」はどの業種でも発生しやすい労働災害ですが、製造業においては、工場内の物につまずいて転倒するといった事故が発生する可能性があるといえるでしょう。
そのほか、「動作の反動・無理な動作」「墜落・転落」「切れ・こすれ」といった労働災害も、例年一定数発生しています。
2 労災事故後の対応について
(1)事故直後の対応
労災事故が発生したら、当然のことではありますが、まずは被災した従業員の救護や安全確保が最優先となります。
重大な事案であれば、救急車の出動要請や他の従業員への避難指示も行うことになります。
そのほか、必要に応じて、警察署への通報や被災した従業員の家族への連絡などを行っていくことになります。
(2)事実調査
事故直後の対応ののちは、できるだけ早い段階で、事故の具体的な状況や原因の調査を行っておくのがよいでしょう。
これらの調査は、後述の各種対応を取ったり、その方針を決めたりするうえで非常に重要です。
調査の方法としては、事故時の状況に関する客観的証拠の収集・保全のほか、事故現場にいた従業員からの聞き取り調査などが考えられます。
(3)労働基準監督署対応、労災申請への協力
労働災害により労働者が死亡または休業した場合、事業者には労働基準監督署長への報告が義務付けられています。
具体的には、所轄の労働基準監督署に対し、「労働者死傷病報告」を提出することになります。
また、被災した労働者が労災保険の適用を受けるためには、病院に、所定の請求書等を提出することになります。
その際、事業主証明という、企業側において記入する項目がありますので、必要に応じてこれに記入するといった対応を取ることになります。
加えて、労災に関して法令違反があれば後述の行政処分の対象となりますので、事案によっては労働基準監督署による調査がなされます。
このような調査にも適切に対応していく必要があります。
(4)損害賠償請求対応
労災に企業側の落ち度がある場合、従業員より、労災保険では補償されない損害(慰謝料など)についての損害賠償請求を受ける可能性があります。
企業が損害賠償責任を負うかは事案によりますが、労災の発生を防止する措置を十分に取っていなかったなどの安全配慮義務違反を理由として、企業の損害賠償責任が認められる例が多く存在します。
そのため、企業側に発生し得る損害賠償責任について適切な見通しを立てながら対応していく必要があります。
3 労働災害について適切に対応しないリスク
(1)刑事責任
労働基準監督署への報告が必要な事案において、上述の労働者死傷病報告を行わないことは労災隠しと呼ばれます。
労災隠しは犯罪であり、50万円以下の罰金という罰則が設けられています。
なお、重大な事故については、業務上過失致死罪といった犯罪が成立する可能性もあります。
(2)行政責任
労働災害が発生した場合、労働基準監督署より、労働安全衛生法や労働基準法への違反を理由とした是正勧告や、機械の使用停止命令、作業中止命令といった行政処分を受ける可能性があります。
上述の刑事責任についても同様ですが、企業がこれらの処分等を受け、そのことが報道されるような事態になると、企業イメージを損なうこととなり、様々な不利益を受けかねません。
(3)従業員関係
労働災害に適切に対応しないことには、まず、被災した従業員との関係で、信用を失い、損害賠償請求が紛争になりやすくなるというリスクがあります。
加えて、他の従業員との関係でも、労災発生時に適切に対応しない企業だと思われると、信頼を失い、人材離れなどにもつながりかねません。
4 従業員の労災対応を弁護士に依頼するメリット
労働災害に関する企業側のリスクは非常に大きいものであり、労災対応は適切な見通しのもと行っていく必要があります。
例えば、企業の責任が明らかな事案であれば従業員に適切な補償を行っていくことが考えられる一方で、企業の責任が明らかでない事案で、安易に労災申請時の事業主証明を行って不利な証拠を作出することなどは避けるべきです。
弁護士に依頼をすることで、専門家のサポートを受けながら適切に見通しを立て、これに応じた対応を行っていくことが期待できます。
5 製造業における従業員の労災対応は当事務所にご相談ください
製造業においては、機械へのはさまれや巻き込まれといった重大な事故が起こる可能性があり、労災対応は特に慎重に行っていく必要があります。
そのため、製造業における労災対応については、できるだけ早い段階で、専門家のサポートを受けながら行っていくことをお勧めいたします。
労災対応にお悩みでしたら、ぜひ一度、当事務所にご相談いただければと存じます。
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