1 製造業における雇用トラブルの特徴
製造業は長年、日本の経済成長を支えてきた基幹産業であり、現在もなおその重要な役割を果たしています。
ひとえに製造業と言ってもその分野は多種多様ですが、人口構造の変化によりどの分野においても人材不足と技術承継の問題に直面しています。
そして、雇用トラブルもこれらに起因するものがほとんどと言えます。
2 製造業でよくある雇用トラブルとは?
(1)多様な雇用形態に基づくトラブル
製造業にかかわらず、深刻な人材不足を補うために、雇用に関する規制緩和がなされています。
その結果、非正規雇用だけでなく、派遣労働者、外国人労働者を活用する企業は珍しくありません。
しかし、その反面、労務管理が複雑になることから、関連法令を綿密に理解しておく必要があります。
また、定期的に規制緩和が実施され、それにより関連法令が改正されるため、
そのような関連法令の知識のアップデートを常日頃から意識していく必要があります。
(2)有期労働契約の終了及び雇止めに関するトラブル
製造業の中でも、特に単純労働を担う従業員は、その業務の代替性の高さから、非正規社員が従事することが多い部分になります。
そのため、企業の業績によっては、真っ先に人員整理の対象とされやすい部分と言えます。
このように、正社員よりも先に非正規社員を人員整理の対象とすることは、一般論として、誤りではありません。
もっとも、非正規社員であるからといって、無下に扱ってよいということにはなりません。
例えば、有期労働契約の場合、雇用期間が満了していないにもかかわらず、突然整理解雇をしてしまえば、不当解雇問題に発展しかねません。
また、雇用期間が満了した場合であっても、これまで何ら問題なく、当然のように繰り返し契約更新をしていた従業員に対して、いきなり次回の契約更新をしないとする対応は、雇止めの法理や無期転換ルールに抵触する可能性があるため、十分に注意する必要があります。
(3)残業代に関するトラブル
製造業の業務量は、受注量によって大きく左右されます。
そのため、人員不足の要因も相まって、繁忙期には残業をしなければ、仕事をさばききれないことも多いでしょう。
また、特に下請け企業では、余裕のない納期設定を受け入れざるを得ず、そのしわ寄せとして、従業員に残業をしてもらう必要が出てくることもあるでしょう。
このように、従業員が長時間労働を強いられている状況では、適切に勤怠管理をし、残業代を支給するのは企業としての義務と言えます。
こういった残業代の支払いを抑えるため、企業側では従業員に安易に管理監督者の役職を付与することがあります。
しかし、管理監督者として認められる要件は比較的ハードルが高いものとされています。
そのため、実際には管理監督者に該当せず、その結果、残業代を支払わないといけなくなった場合、一度に多額の残業代を支払うこととなりかねないため、慎重に判断する必要があります。
(4)労働災害に関するトラブル
製造業は、労働災害による死傷者が最も多い業種となっています。
特に、高所からの転落、転倒、巻き込みなどによる負傷や、有毒物質の吸引による疾病などが多く、枚挙にいとまがありません。
こういった労働災害が起きやすい遠因は、危険性の高い機械・設備を使用することにありますが、それは労働災害に遭った従業員にのみ原因があるわけではないことがほとんどです。
例えば、長時間の作業が続いたことで注意散漫となって労働災害に遭ったとするのであれば、それは職場の就労環境にも原因があるのではないかと考える余地があります。
また、そもそも現場での安全管理がなされていたのか、機械・設備の正しい使い方について十分な研修をしていたのかなどといった、根本的に職場環境が整備されていたのかという面が問題になることもあります。
このように、労働災害が発生した場合には、被害者からの損害賠償請求を受けるだけでなく、場合によっては刑事上、行政上の処分の責任を問われることもあります。
したがって、あらゆる危険性を想定し、日ごろから労働災害の防止に努め、従業員にはその周知徹底を図る必要があります。
3 雇用トラブルの未然防止策
以上のとおり、雇用トラブルが発生した場合には、多額の賠償金や残業代を支払う問題につながりかねません。
また、それだけでなく雇用トラブルに対応するための多大な時間と労力を要します。
当然ですが、労務問題が発生してもこれに都度対応するだけでは、根本原因の解消になりませんので、今後も同様の雇用トラブルが発生することは目に見えています。
したがって、そもそも雇用トラブルを発生させないために、事前防止に労力をかけることが肝要です。
これを怠ると、従業員が定着せず、あるいは、応募が来ないなど、人材不足の問題の悪循環から抜け出せなくなりかねません。
4 製造業における雇用トラブルは当事務所にご相談ください
このように、雇用トラブルに際しては、早め早めに動くことに越したことはありません。
もちろん、いかに事前予防に注力していたとしても、雇用トラブルを完全に防ぎきることは困難かと思いますが、いざ発生した場合における対応は異なってくるでしょう。
当事務所では、トラブル発生前の体制構築から、トラブル発生後の対応、紛争に至った際の示談交渉や訴訟対応など、各段階における法的サービスを提供させていただいております。
製造業における雇用トラブルについて、お悩みの点があるようでしたら、まずは当事務所までご相談いただければと存じます。
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