1 病院・クリニックの労務問題の特徴

病院・クリニックは、診療行為という公共性が高い業務を担う特殊性があります。
それゆえ、他の一般的な職場には見られない労務問題が発生することがあります。

ここでは、病院・クリニックの労務問題の特徴とその対策について、ご説明いたします。

(1)スタッフとの契約関係の問題

医療現場では慢性的な人手不足から、長時間労働が常態化する傾向にあります。
スタッフの労働時間を適切に管理していない場合、残業代の未払いといった問題が発生する可能性があります。
また、期間を定めて雇用しているスタッフの雇止めについては、実質的に無期雇用といえる場合には、正社員の解雇と同様に慎重な判断が必要となります。

病院・クリニックでは、非常勤医師や外部スタッフを用いることがありますが、これらの者は、基本的には業務委託契約として整理されることになります。
労働基準法など労働者保護を目的とした法律の適用がない形にしているのが一般的です。
しかし、契約書で「業務委託契約」と明記することなく、漫然と長期間にわたって働かせているといった事情がある場合には、労働者として法律上の保護を受けるようになる可能性があります。
トラブルを未然に防ぐために、契約関係の整理を明確に行うことが必要です。

さらに、無断欠勤や遅刻を繰り返すスタッフや、著しく能力が低いスタッフがいる場合、そのスタッフとの雇用契約を継続するべきかどうかという問題もあります。
このようなスタッフがいる場合には、そのスタッフを適法に解雇できるのかどうか検討する必要があります。

(2)ハラスメント問題等

パワハラやセクハラといったハラスメント問題、スタッフ同士のいじめといった問題が発生することもあります。
医師から看護師に対し、高圧的な言動が行われ、パワハラが発生することもあります。

こうしたハラスメントが発覚した場合、管理者である病院・クリニックにおいては、事情聴取や関係者の処分といったように、適切な対応を行う必要があります。
このような対応を行わずにハラスメント問題を漫然と放置していた場合、病院・クリニックが損害賠償請求を受ける可能性があります。

また、病院・クリニックにおいては、顧客となる患者から、理不尽な要求を受けることがあります。
これはペイシェントハラスメントと呼ばれるものですが、患者からの理不尽な要求に対して適切に対応していない場合、病院・クリニックが損害賠償請求を受ける可能性があります。

特に近年は、他の業界でもカスタマーハラスメントの対策が積極的に取り組まれているところですので、病院・クリニックにおいても軽視できない問題となっています。

2 労務問題を放置するリスク

(1)労働環境の悪化

病院・クリニックが労務問題に対して適切に対応しない場合、当事者となるスタッフが問題を放置されたと感じることはもちろんです。
また、スタッフ同士で噂が広まることになり、最終的には職場全体に行き渡る可能性もあります。
スタッフは、問題を放置する病院・クリニックに対して不信感を抱くでしょう。
この不信感は、スタッフが業務指示に従わないことや、業務が停滞することに繋がり得ます。

また、相談しづらい職場環境となって、業務上の問題が生じたときに速やかにスタッフ間で共有することができなくなります。
その結果、一人のスタッフが問題を抱え込むことになり、その能力を十分に発揮できなくなるでしょう。

このようなスタッフのモチベーションの低下は、ひいては、病院・クリニック全体の生産性低下に繋がり得るものです。

(2)人材の流出・採用の難化

労務問題に適切に対応しなかったとき、当事者となるスタッフが退職することもあるでしょう。
また、噂が職場全体に広まり、将来性がないとして、当事者以外のスタッフが退職する可能性もあります。

職場環境が悪いことは、外部にも広まり、その病院・クリニックで働きたいと考える人も少なくなるでしょう。
そうすると新規採用を行うことも困難になります。

(3)法的なリスク

労務問題に対し、病院・クリニックが管理者として適切に対応をしていない場合、損害賠償請求を受ける可能性があります。

例えば、スタッフを雇用する病院・クリニックは、スタッフの健康や安全に配慮する義務を負っています。
法律的には安全配慮義務と呼ばれるものですが、この義務に違反した場合には、スタッフから損害賠償請求をされる可能性があります。
高圧的な上司からのパワハラ、患者からのセクハラといった問題が生じたにもかかわらず、病院・クリニックが漫然と放置し、事情聴取や関係者の処分といった対応を行わなかった場合、法的な責任が発生する可能性があります。

また、例えばパワハラにより心療内科から正式な診断を受けたとして、労働基準監督署から労災認定を受けることも考えられます。
被害者から労災申請が行われ、労働基準監督署による調査が行われる場合、病院・クリニックは調査対応のための時間をとられることになります。
書類作成や職員に対する説明の対応が必要になり、人的・時間的なコストが発生します。

(4)ブランド力の低下

病院・クリニックの規模や診療内容によっては、そのブランド力、「この病院は信頼できる」「この先生は患者の話をよく聞いてくれる」といった口コミ的な評価が集客に繋がっている面があると思います。
口コミ的な評価は、一朝一夕に生まれるものではなく、長年の努力によって少しずつ広まっていくものです。
労務問題に対して適切に対応していない場合、そのことが外部にも広まり、ブランド力の低下に繋がる可能性があります。

3 病院・クリニックの労務問題を弁護士に依頼するメリット

労務問題について弁護士にご依頼いただいた場合、次のようなメリットがあります。

(1)代理人としての活動

特定の労務問題について、弁護士がご依頼を受け、代理人として活動することができます。
スタッフとの契約書の内容確認、問題発生時の対応方法の助言、本格的な損害賠償請求を受けた際に代理人として交渉をすることができます。
弁護士であれば、労務問題を含むあらゆる法律事務について代理人となることができます。

裁判になる前の交渉段階では、裁判に発展した場合の見通しを踏まえ、交渉して相手を説得していきます。

仮に裁判手続きに移行した場合には、弁護士であれば代理人として手続きに関与することができます。
例えば、労働者から労働審判を起こされた場合には、裁判所に提出するための主張を記載した書面を作成・提出することができます。
証拠が必要になる場合には、必要な証拠を整理・準備の上、裁判所に提出することになります。
また、病院・クリニックの代表者や担当者と一緒に労働審判に出頭して手続きに臨むことができます。
裁判所や労働者に対し、病院・クリニックの主張を説得的に伝えることができます。

さらに、労働者から損害賠償を求める民事訴訟が提起された場合も、同様に、弁護士が裁判所に提出する書面や証拠を提出することができます。
裁判所から和解の提案がされたとき、それが不当な内容である場合には裁判所の説得を試みます。
病院・クリニックの代表者や担当者の尋問が行われるときには、一緒に裁判所へ出頭し、サポートさせていただくことができます。

このように、弁護士は代理人としてあらゆる活動を行うことができますので、問題の解決まで全面的に尽力することができます。

(2)研修の実施

弁護士が社内研修の講師を行うこともできます。
弁護士は外部の専門家となりますので、客観的な立場から研修を行うことができます。
特に顧問弁護士の立場で研修を行う場合、継続的に経営に関与していますので、病院・クリニックの実情に合わせた形で研修を行います。
管理職向けと一般スタッフ向けといったように、研修の対象を分けて行うことも効果的です。

一つの例として、ハラスメント問題について研修を行うことができます。
何がハラスメントに該当するのか、ハラスメントが発覚した場合の対応方法、病院・クリニックの法的責任について、専門家の立場で解説させていただきます。
そもそも、何がハラスメントに該当するのか知らないスタッフもいる可能性がありますので、研修で基本的な知識を身に付けさせることで、ハラスメント問題の予防が期待できます。

(3)顧問弁護士としての関与

スポット的に弁護士がご依頼をお受けすることもできますが、問題が発生する前に、顧問弁護士として関与させていただくこともできます。
顧問弁護士であれば、病院・クリニックの法的なサポートに継続的に関与しておりますので、深刻な労務問題が発生したときに、実情に沿ったアドバイスをさせていただくことができます。

また、雇用契約に関係する法律は頻繁に改正されています。
改正が行われたとき、既存の雇用契約書や就業規則を見直す必要があります。
そのようなとき、継続的に関与している顧問弁護士であれば、迅速に対応することができます。

4 病院・クリニックの労務問題は当事務所にご相談ください

当事務所の弁護士は、これまでに、医療機関の方から、様々な労務問題についてのご相談・ご依頼をお受けしてきました。
また、様々な医療機関を含む企業・法人様の顧問弁護士に就任しており、迅速かつ丁寧な法的サービスを提供させていただいております。
労務問題についてお困りの病院・クリニック様がいらっしゃいましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

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