1 病院・クリニックでよくあるハラスメント問題とは?

近年では、様々なハラスメントが問題視されています。
病院・クリニックにおける院内のハラスメントは、パワハラやセクハラ、カスハラが典型的なものとして考えられます。
 
 

(1)パワハラとは

1 病院・クリニックでよくあるハラスメント問題とは?

近年では、様々なハラスメントが問題視されています。
病院・クリニックにおける院内のハラスメントは、パワハラやセクハラ、カスハラが典型的なものとして考えられます。

(1)パワハラとは

パワハラとは、「優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されます。
労働施策総合推進法により、事業主に対し、適切な対応を行うための整備をする義務が課せられています。

病院・クリニックにおいては、例えば医師が看護師に対し、業務上必要な指導を超えて、厳しい口調や発言があった場合には、パワハラが問題になる可能性があります。

(2)セクハラとは

セクハラとは、「労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が害されることや、性的な求めに応じなかった労働者が不利益な扱いを受けること」と定義されます。
男女雇用機会均等法において、事業主に対し、セクハラに対する対応方針の明確化や相談窓口の整備、事案が発生した場合の対応方法等について、防止措置をとることが義務付けられています。

病院・クリニックにおいては、男性職員が女性職員の体に触れたり、昇進の条件として性的な関係をほのめかしたりすること等が、セクハラとして問題になる可能性があります。

(3)カスハラとは

カスハラとは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されます。
病院・クリニックにおいては、患者が顧客となりますので、ペイシェントハラスメントと言われることもあります。

カスハラについても、労働施策総合推進法により、事業主に対し、カスハラに対する方針の明確化、相談体制の整備、事案発生後の対応方法等について、カスハラ対策を講じることが義務付けられています。

2 病院・クリニックでのハラスメントは泣き寝入りするケースが多い

病院・クリニックは、医師である院長をトップにして、他の医師、看護師や事務職員といった労働者が所属する組織構造となります。
医師とその他の労働者の間には、明確な立場の違いがあります。
このような構造から、医師が他の職員に対し、パワハラやセクハラを行う事例があります。
パワハラとしては、大声で怒鳴られることや、人格を否定する発言をされることが代表的な事例となります。

また、職員が患者や取引先からカスハラを受けた場合、医師との明確な立場の違いから、職員がその事実を相談・報告できない場合があります。

さらに、時代に遅れた考え方ですが、「看護職は女性が担当すべきであり、男性である医師が常に優越しているべきだと」との風潮が残っている病院・クリニックがあります。
このような性別役割分担の固まった考え方から、本来はハラスメントと評価されるべきものについて、過剰に反応していると思われたくないとして、声を挙げにくい環境となっています。

患者からのハラスメントについては、看護の際に体に触れられるなどのセクハラが問題となることがあります。
こうしたセクハラは、カーテンで仕切られた病室等、第三者から見られにくい環境で行われることが多いため、被害者が自発的に相談・報告しなければ被害が発覚することはありません。

いずれのハラスメントについても、職場の構造的な問題、性別に関する固定観念、ハラスメントが行われる場所の特性といった点から、病院・クリニックでのハラスメントは泣き寝入りとなるケースが多いといえます。

3 院内でのハラスメントを放置するリスク

ハラスメントを放置した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?
以下でご説明いたします。

(1)労働者のモチベーションの低下

ハラスメントに対して病院・クリニックが毅然と対応しない場合、職場としての有り方に失望する労働者もいると考えられます。
そのような場合、労働者のモチベーションが低下するのはもちろんのことです。
また、個人の労働者にとどまらず、モチベーションの低下が他の労働者にも広がり、職場全体として生産性が低下することも考えられます。

このように、ハラスメントを放置した場合、個々の労働者に対する悪影響はもちろんのこと、経営的な観点からも支障が生じることがあり得ます。

(2)労働者の退職に繋がる

労働者のモチベーションが著しく低下し、職場で勤務を継続できないと判断した場合、退職に繋がる可能性があります。
病院・クリニックにおいては、多額の資本を投下して労働者を雇用・育成してきたところ、労働者の退職により、大きな損失を被ることになります。
もちろん退職は労働者の意思で行われますが、円滑な経営という観点から、労働者が働きやすい環境づくりを行っていくべきです。

その一つの方法として、ハラスメントに対しては病院・クリニックとして毅然と対応し、労働者を守っていくことが有効です。

(3)対応にコストが発生する

ハラスメントの申告がきっかけで、労働基準監督署による調査などが行われると、調査に対応する時間が発生します。
また、書面による報告を求められることもありますので、その書面作成に時間を要することになります。
これらの業務は病院・クリニックにとって本来的なものではなく、通常の診療業務が停滞するという不利益が発生します。

後述するような法的責任を追及される場合の対応コストも、非常に大きいといえます。

(4)法的責任を追及されるリスク

仮にハラスメントを放置していた場合、病院・クリニックが民事的な損害賠償責任を負う可能性があります。

また、ハラスメントを行った労働者に対して、最も重い処分として懲戒解雇を行う場合もあるでしょう。
そのとき、法的に懲戒解雇を有効に行えるのであれば問題ありませんが、裁判で懲戒解雇の有効性を争われることがあります。

仮に裁判所が懲戒解雇は無効であると判断した場合、労働者に対する賃金を払う必要が出てきます。
実際には労働者が働いていないにもかかわらず、労働者が働いていれば得られたであろう賃金を支払う必要性があります。
これは、会社の都合で労働者が勤務できなかったためです。

仮に月給25万円の労働者が2年後に解雇無効との判決が出た場合、25万円×24か月=600万円の賃金を支払うことになります。

このように、慎重に検討することなく安易に懲戒解雇を行うと、法的な責任を追及されるリスクがあります。

さらに、病院・クリニックについては、医療法や医師法、健康保険法といった各種の行政関係の法律による規制があります。
このような行政法上の観点から、ハラスメント放置といった公益的に相応しくない事象が発生した場合、行政指導や業務停止等の行政処分を受ける可能性があります。

(5)SNSや口コミサイトでの風評被害

昨今では病院・クリニックに関するSNSや口コミサイトが発展しており、新規に病院を探す人は口コミを重視しています。
仮にハラスメント問題を放置して悪い口コミを投稿された場合、新規の患者を失うだけでなく、既存の患者や取引先との信頼関係も損なうことになります。

そこで、円滑な経営という観点からは、SNSや口コミサイトに悪評を投稿されないようにすることが大切です。
そのためには、日々の労働者への対応や診療業務において、悪評が発生しないように、細心の注意を払って対応をしていく必要があります。

4 ハラスメントをする従業員・スタッフへの対応

労働者がハラスメントの被害者になるだけでなく、労働者自身が加害者になることもあります。
上司である医師が看護職に対してパワハラとセクハラを行うことはその典型例です。

ハラスメントの加害者は、自分の言動がハラスメントに該当することに気付いていない可能性があります。
そのため、常に自身の言動を見返すように、病院・クリニック全体としてハラスメントは許されないとの意識を高めていく必要があります。

具体的には、研修の実施や社内広報等によって、ハラスメントは許されないことを周知していくことが有効です。

5 弁護士に依頼するメリット

(1)調査と助言

ハラスメント問題については、弁護士に相談することが有効です。
弁護士は法律の専門家ですので、ハラスメント関係の法律に精通しています。
弁護士による調査が必要な場合には、弁護士が窓口となって社内調査を行うこともあります。
法的観点に基づき、どのような事象が発生したのか、問題点は何か、対処の方法等について調査・検討を行っていきます。
そして、調査・検討の結果に基づき、法的観点からアドバイスを行うことができます。

さらに、顧問弁護士であれば継続的に病院・クリニックに関与していますので、実情に即したアドバイスをすることができます。

(2)代理人としての関与

事案の内容によっては、弁護士が代理人として関与するのが最善といえるケースがあります。
このような場合、弁護士が代理人となって紛争の相手方と交渉をすることができます。

仮に裁判手続きに移行した場合には、弁護士であれば代理人として手続きに関与することができます。
例えば、労働者から労働審判を起こされた場合には、裁判所提出書類を作成・提出するとともに、病院・クリニックの代表者や担当者と一緒に労働審判に出頭して手続きに臨むことができます。
労働者から損害賠償請求を求める民事訴訟が提起された場合には、裁判所提出書類の作成・提出をはじめ、必要な主張・立証などの裁判対応を行うことになりますが、この対応も弁護士が行うことができます。

(3)社内研修の実施

弁護士が社内研修の講師を行うこともできます。
院内の関係者が講師となる場合と異なり、弁護士は外部の専門家となるため、客観的・専門的な立場から研修を行うことができます。
研修を行う場合についても、顧問弁護士であれば継続的に経営に関与しているため、院内の実情に即した内容で講演を行うことができます。

管理職向けと一般職員向けといったように、研修内容を分けて行うことも効果的です。

以上のように、弁護士はあらゆる法律事務を行うことができますので、病院・クリニックにおけるハラスメント問題についても対処することができます。

6 病院・クリニックにおける院内のハラスメント問題は当事務所にご相談ください

当事務所の弁護士は、これまでに、医療機関の方から、ハラスメント問題を含む様々な法的問題について、ご相談・ご依頼をお受けしてきました。
また、様々な医療機関を含む企業・法人様の顧問弁護士に就任しており、迅速かつ丁寧な法的サービスを提供させていただいております。
ハラスメント問題についてお困りの病院・クリニック様がいらっしゃいましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

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