弁護士・木村哲也
代表弁護士

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はじめに

社屋・店舗の敷地・駐車場などの社有地に車両が放置されている場合、その車両をどのようにして撤去するか?という問題があります。
今回のコラムでは、このような放置車両の撤去の問題について、ご説明させていただきます。

自力救済の禁止

社有地に放置された車両への対処として、車両の所有者に無断で、自社で放置車両をレッカー移動して処分してしまおうとお考えになる方もいらっしゃいます。
しかし、このように車両の所有者に無断で車両を撤去してしまうことを「自力救済」と言いますが、自力救済は法律上原則として禁止されています。
自力救済をしてしまうと、後々、器物損壊などの罪に問われるおそれがありますし、車両の所有者から損害賠償を請求されるリスクもあります。

適法に車両を撤去する手順

社有地に放置された車両の撤去は、まずは車両の所有者に対する撤去の請求を行うこと、それが難しければ、車両撤去を求める民事訴訟(裁判)・車両撤去の強制執行により撤去を実現する、という手順となります。

車両の放置状況の記録

車両の所有者の特定や車両撤去を求める民事訴訟(裁判)の下準備として、車両の放置状況を記録しておく必要があります。
具体的には、次のような作業を行うことが必要となります。

①写真を撮影する(車体の前後左右、ナンバープレート、車検ステッカー、車体・タイヤ等の汚れ・損傷の状況、車内の状況、放置場所が分かる写真など)。
②現場見取図を作成し、車両の放置位置を図示する。
③定期的に放置車両の状態を確認し、日誌などを付けて記録化する(放置されている期間を記録する。また、車両が動かされているのか?まったく動かされていないのか?いつから動かされなくなったのか?などの状態を記録する)。

車両が時々動かされているのであれば、フロントガラスに警告書を貼るなどすれば、再度の駐車を阻止できる可能性があります。

また、念のため警察に相談するとよいでしょう。
警察は私有地における放置車両のような民事の問題には基本的に介入しませんが(民事不介入)、もし放置車両が盗難車などの犯罪事実に関連する車両なのであれば、警察が車両の引き上げ・撤去を行うことにより早期解決することがあります。

車両の所有者の特定

車両の所有者に対する撤去の請求を行うに当たり、まずは車両の所有者を特定する必要があります。
放置車両にナンバープレートが付いていれば、車両の所有者の住所・氏名等を調査することが可能です。
すなわち、普通乗用自動車であれば、陸運支局で、前述の車両の放置状況の記録を提示すれば、放置車両の登録事項証明書の交付を受けることができます。
また、軽自動車であれば、弁護士が軽自動車検査協会に対し、弁護士法23条の2に基づく照会を行うことにより、軽自動車検査記録簿の写しを入手し、車両の所有者の情報を取得することができます。
なお、ナンバープレートが外されている車両については、別途、個別に対応を検討する必要があります。

車両の所有者に対する撤去の請求

車両の所有者の住所・氏名等が確認できれば、まずは車両の所有者に対して撤去を求める通知書を送付するなどして、車両撤去に向けた交渉を行うのが通常です。
車両の所有者から応答があり、車両撤去の協力が得られる場合には、任意撤去による早期解決が可能となります。
なお、陸運支局・軽自動車検査協会で確認した住所から転居している場合もあり、このような場合には住民票をたどるなどして、現在の住所を確認したうえで車両の所有者にコンタクトをとる必要があります。

車両撤去を求める民事訴訟(裁判)

車両の所有者と連絡が取れない場合や、車両の所有者から協力が得られない場合には、裁判所に車両撤去を求める民事訴訟(裁判)を提起することとなります。
民事訴訟を提起し、裁判所から車両の所有者のもとに訴状が送達された段階で、車両の所有者が撤去に応じてくることもあり、その場合には任意撤去による解決が可能となります。
そうでなければ、車両撤去を命じる判決を取得したうえで、後述する車両撤去の強制執行を行います。
なお、車両の所有者が裁判所から送達される訴状を受領しない場合や、所在が不明な場合などには、住居を調査したうえで付郵便送達・公示送達(特殊な訴状送達形式)の手続をとる必要があるなど、判決までに時間がかかるケースがあります。

車両撤去の強制執行

車両撤去を命じる判決を得た場合であっても、自力救済が原則として禁止されることには変わりはありません。
車両撤去を実現するためには、裁判所に強制執行を申し立て、公権力によって放置車両を撤去する方法をとる必要があります。
強制執行の申立てをするためには、裁判所に相当額の予納金を納付しなければなりません。
このような費用負担を考えれば、強制執行に至る前に任意撤去を実現することが理想的であると言えます。

まず、放置車両に価値があると見込まれる場合には、普通自動車であれば自動車競売の申立て、軽自動車であれば動産執行の申立てを行います。
競売等の手続により放置車両を第三者に売却することができれば、放置車両の撤去を実現できるとともに、売却代金から手続費用の一部を回収することができます。
また、自社が競落したうえで、第三者に売却することも可能です。
これに対し、放置車両に価値がないと見込まれる場合には、土地明渡しの強制執行の申立てをします。
この場合、裁判所の執行官が放置車両の査定をし、執行官も価値がないと判断すれば、放置車両の廃棄処分を行います。
一方で、強制執行の申立後に裁判所の執行官が放置車両に価値があると判断すれば、普通自動車については強制競売の申立て、軽自動車については売却手続を実施し、放置車両の撤去と売却代金から手続費用の一部回収が実現されます。

社有地に車両を放置させないための予防策

以上のように、社有地に車両を放置されてしまうと、その車両を撤去するには面倒な手順を踏む必要があり、非常に手間がかかります。
強制執行にまで至れば、費用も多くかかります。
そのため、社有地に車両を放置させないための予防策を講じることも大切です。
具体的には、社有地への侵入を防止するための囲い・ゲートを付ける、無断駐車・車両放置等の状況を記録するための防犯カメラを設置する、放置車両があればすぐにフロントガラスに警告書を貼る、などの対策が考えられます。

弁護士にご相談ください

当事務所では、放置車両の撤去の問題について、対応実績が豊富にございます。
社屋・店舗の敷地・駐車場などの社有地に放置された車両についてお困りでしたら、当事務所にご相談いただければと存じます。

記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2023年4月28日

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