はじめに

全国で新型コロナウイルス関連倒産が相次いでいます。
当事務所でも、企業破産に関するご相談・ご依頼を承っております。
今回のコラムでは、企業破産の手続の流れと、企業破産の手続のポイントなどについて、解説させていただきます。

企業破産の手続の流れ

①事業停止日の決定

現金が最も多く手元に残るタイミング、手形が不渡りになるタイミング、その他様々な状況を踏まえて、事業を停止する日を決めます。
事業停止日までの間は、通常どおりに営業を継続するのが原則です。

②自己破産の申立ての準備

自己破産の申立ての準備は、従業員・債権者・取引先等の混乱を避けるために、代表者等だけで秘密裏に進めるのが原則です。
企業・法人の財産の確保、印鑑・鍵類・会計関係等の資料などの整理、債権者の把握、裁判所に提出する書類の作成など、準備事項は多岐にわたります。

③事業の停止・従業員の解雇

①で決定した事業停止日に事業を停止するとともに、従業員に対し、自己破産する旨を説明し、解雇を通知します。
その上で、速やかに、営業所等の閉鎖、賃借物件の明渡しなどを進めます。

④自己破産の申立て・関係者への通知

破産に至る経緯等を記載した「破産手続開始申立書」を作成し、企業・法人の定款や帳簿類その他様々な添付資料を添えて裁判所に提出することで、申立てを行います。
また、債権者等の関係者に対し、事業を停止し、自己破産を申し立てたことを知らせる通知書を送付します。

⑤破産手続開始決定・破産管財人の選任

裁判所から破産手続開始決定が出され、破産管財人が選任されます。
以降は、破産管財人が破産した企業の財産を管理していくこととなります。

⑥破産管財人による管財業務

破産管財人は、破産した企業の財産状況・破産に至る経緯の調査、破産した企業の財産の管理・処分などの管財業務を行います。
破産した企業の代表者等は、破産管財人の調査等に協力する義務があります。

⑦債権者集会

破産手続開始決定から数か月後(通常は約3か月後)に、裁判所で債権者集会が開催されます。
債権者集会では、破産管財人による管財業務に関する報告や、裁判所による必要な決定などが行われます。
管財業務が未了の場合には、次回の債権者集会の日程が決められます。

⑧債権者への配当・破産手続の廃止

破産管財人が破産した企業の財産の処分・換価を完了し、債権者への配当が可能なだけの原資が確保できれば、配当の手続が実施されます。
そして、債権者への配当が終わると、破産手続が終了となります。
一方で、債権者への配当に足りる原資が確保できなかった場合には、裁判所による破産手続廃止の決定が出され、配当が実施されずに破産手続が終了となります。
破産手続の終了によって、破産した企業は消滅します。

企業破産の手続のポイント

スケジュール

企業破産においては、資金の確保、従業員の解雇、仕掛中の工事の処理など、様々な問題点を含んでいることが多いです。
スムーズに自己破産の手続を進めるためには、事業停止・従業員解雇のタイミング、裁判所に自己破産を申し立てるタイミングなど、しっかりとスケジュールを組んで臨むことが必要です。

資金の確保

企業破産の手続では、裁判所に納付する予納金や弁護士費用などを用意しなければなりません。
完全に資金がショートしてからでは、自己破産の手続に乗せることすら難しくなりますので、ご注意いただく必要があります。
近々支払われる予定の売掛金や、まとまった預貯金がある場合には、これらをきちんと確保できれば、自己破産の手続費用にあてることが可能です。
どの時点でいくらの資金を確保することができるのか、どの時点で手元の現金が最大となるのかなどを踏まえて、事業停止日を決定することになるでしょう。

資料の確保

自己破産を申し立てる際には、裁判所に様々な資料を提出する必要があります。
預金通帳、決算報告書・確定申告書、賃金台帳、契約書類(賃貸借契約書、リース契約書など)、保険証券(火災保険、自動車保険、建設工事保険など)、その他の証券(出資証券、ゴルフ会員権、株券など)、不動産登記簿謄本、定款・法人登記簿謄本などです。
自己破産の申立ての準備段階に、これらの資料をしっかりと確保することが必要です。

債権者の把握

企業破産では、債権者の数が多いのが一般的です。
債権者としては、融資を受けている金融機関、代金の未払いが発生している取引先、賃借物件の貸主などが考えられます。
また、税金・社会保険料、光熱費などの公共料金、従業員の給与など、支払義務があるのに履行していないというものは、ほとんどが債権者です。
このように、多数存在する債権者を、漏れなくリストアップすることが必要です。

従業員の解雇

企業破産では、事業を停止するにあたって、従業員を解雇しなければならないケースが多いです。
従業員の給与に未払いがある場合には、国がその一部を立て替えてくれる制度があります。
従業員に対して、未払い賃金の立替払い制度について十分に説明し、解雇する従業員の生活維持に協力することも大切です。

賃借物件等の処理

賃借物件がある場合には、貸主への返還を行うのが原則です。
ただし、賃借建物内に所有する什器・備品類が多数ある場合や、賃借土地上に建物を保有している場合などには、破産管財人に賃貸借契約の処理を委ねることになります。
ローン物件、リース物件については、いずれ債権者が引き上げていくこととなりますので、現状維持に努めます。

企業の代表者・連帯保証人の自己破産

企業破産では、代表者等が銀行融資等の連帯保証人になっているケースが大半です。
このように、連帯保証債務を負う企業の代表者・連帯保証人についても、企業と同時期に自己破産の申立てをしなければならないのが通常です。

自己破産の手続では、破産者の財産が破産管財人によって換価(売却・処分)され、債権者への配当の原資に回されるのが原則です。
また、抵当権が設定された不動産は、競売にかけられるのが通常です。
ただし、企業の代表者・連帯保証人の名義の財産については、一定の範囲の財産を手元に残すことができます。
まず、家具、家電、衣類などの生活必需品、その他一定範囲の動産類、破産開始決定後に新たに取得した財産については、自己破産の手続によって処分されることはありません。
また、現金・預貯金、自動車、生命保険の解約返戻金など一定の類型の財産について、合計99万円までを手元に残すことができる「自由財産の拡張」という制度があります。
なお、企業名義の財産については、手元に残すことはできないのが原則です。

企業の代表者・連帯保証人は、自己破産の手続を終えることにより、免責(債務の免除)を受けることができるのが通常です。
しかし、財産隠しを図ったとか、自己破産の手続において虚偽の申告をしたとか、破産管財人の調査に協力しなかったなど、一定の事由に該当する場合には、免責が許可されないこともあります。
自己破産の手続には、誠実に対応していくことが必要です。

弁護士にご相談ください

企業破産の手続は、非常に複雑・困難で専門性が高く、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
企業破産の手続を弁護士にご依頼いただくことによって、弁護士が自己破産の申立てに向けた最適のスケジュールを組み、限られた時間内で確実に自己破産の準備および申立てを実行し、破産手続開始決定から破産手続の終結までの各種手続、企業の代表者・連帯保証人の自己破産の手続まで、安心してお任せいただくことができます。
当事務所では、これまでに、地域の企業様の自己破産に関するご相談・ご依頼を多数取り扱って参りました。
自己破産を検討している企業様がいらっしゃいましたら、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。

(弁護士・木村哲也)