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弁護士木村哲也

弁護士・木村哲也  
代表弁護士

主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。

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はじめに

新型コロナウイルス感染症の流行により、経営悪化に陥る企業が少なくありません。
そして、新型コロナによる経営悪化を理由とする従業員の解雇を検討・実行する企業も多数出てきています。
しかし、日本の法律では従業員の解雇が有効とされるためのハードルが高く、新型コロナによる経営悪化を理由とする解雇であっても、不当解雇と判断されるリスクがあります。

企業が経営上の理由で人員削減のために行う解雇のことを、「整理解雇」と言います。
新型コロナによる経営悪化を理由とする従業員の解雇は、整理解雇に当たるものです。
整理解雇は、従業員の落ち度がなく実施されるものであることから、有効な解雇とされるためには、厳格な要件を満たす必要があります。

整理解雇の4要件

一般的な解雇の要件として、労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。
そして、具体的には、整理解雇が有効とされるためには、裁判例により、次の4つの要件を満たす必要があるとされています。

【整理解雇の4要件】
①人員削減の必要性
②解雇回避の努力が尽くされていること
③解雇者の選定基準の妥当性
④解雇に至る手続の妥当性

①人員削減の必要性

整理解雇が有効とされるためには、経営上の理由で人員削減をする必要性が求められます。
例えば、新型コロナの影響により、店舗の閉鎖を余儀なくされ、余剰人員が生じてしまった場合などです。
そして、新型コロナとの関係では、政府による雇用調整助成金、その他各種支援措置を活用することも考えられますので、人員削減の必要性については、これらの制度の活用も検討しながら、慎重に判断する必要があるでしょう。

②解雇回避の努力が尽くされていること

整理解雇が有効とされるためには、企業において解雇回避の努力が尽くされていることが求められます。
例えば、余剰人員の配置転換、残業の削減、新規採用の停止、希望退職者の募集、非正規の従業員の雇止め、役員報酬の削減など、解雇を回避するための真摯かつ合理的な手段を取ることが必要です。
そして、新型コロナとの関係では、上記のほかに、政府による雇用調整助成金、その他各種支援措置を積極的に利用し、従業員の雇用を最大限守ろうとしたかという点も、整理解雇の有効性判断の重要な要素となるでしょう。
解雇は従業員に対する影響が非常に大きいため、企業にはできる限り解雇を回避するための努力を尽くすことが要求されるのです。

③解雇者の選定基準の妥当性

整理解雇が有効とされるためには、解雇する人数を定めたうえで、合理的な選定基準を設け、その基準を適正に運用して、解雇者を決定することが求められます。
選定基準としては、年齢、勤続年数、扶養家族の有無、職種、勤務地、業績などの要素が考えられます。
特定の従業員を恣意的に解雇すると、不当解雇と判断されるおそれがあるため、注意が必要です。

④解雇に至る手続の妥当性

整理解雇が有効とされるためには、企業としては、従業員や労働組合に対し、整理解雇を実施することおよび詳細を説明し、納得を得るために協議を行うことが求められます。

有期雇用の従業員の雇い止めについて

有期雇用契約の期間満了時に、企業が契約の更新を拒絶して雇用を終了させることを、「雇い止め」と言います。
新型コロナによる経営悪化を理由とする有期雇用の従業員の雇い止めを検討・実行する企業も多いです。
雇い止めは、あらかじめ合意した雇用契約の期間が満了したことを理由とするものであり、原則として有効とされます。

ただし、①有期雇用契約が反復して更新されており、無期雇用契約と同視することができる場合、②従業員が有期雇用契約の更新を期待することについて合理的理由がある場合には、雇い止めには解雇と同様のハードルが課されます(労働契約法19条)。
したがって、上記の整理解雇の4要件に基づいて、解雇が有効とされるか否かが判断されることとなります。

なお、有期雇用の従業員を、契約期間の途中で解雇するためには、「やむを得ない事由」が必要とされています(労働契約法17条)。
この「やむを得ない事由」とは、契約期間の満了を待つことなく直ちに雇用関係を終了させざるを得ないような特段な事由を言うものと考えられています。
整理解雇の場合よりも慎重な判断が必要となります。

退職勧奨について

整理解雇や雇い止めについては、上記のように、法的な制限があります。
これに対し、企業が従業員に対して任意に退職することを打診する「退職勧奨」という選択肢もあります。
退職勧奨は、法的な規制がないため、原則として、企業が自由に行うことができます。

ただし、退職勧奨は、あくまでも、従業員の自由な意思決定により、任意に退職することを促すものです。
したがって、脅迫的な言葉を用いて退職を迫るとか、退職を拒否しているのに繰り返し退職を要求するなどの行為は、退職強要という違法行為となります。

また、退職勧奨を一旦行うと、その従業員との信頼関係が破壊され、場合によっては反抗的な態度を取るようになることも考えられます。
退職勧奨を契機として労使トラブルが発生することも少なくありませんので、そのようなリスクも踏まえたうえで、退職勧奨に踏み切るかどうかを判断することが大切です。

弁護士にご相談ください

以上のように、新型コロナによる経営悪化を理由とする従業員の解雇に当たっては、整理解雇の4要件を満たすかどうかを慎重に見極め、適正な手続・手順をもって進めていかなければなりません。
また、有期雇用の従業員の雇い止め、退職勧奨についても、違法とされるおそれがないかどうかなどを十分に吟味し、慎重に対応していくことが必要です。
当事務所では、整理解雇、有期雇用の従業員の雇い止め、退職勧奨に関するご相談、実行のサポートを承っております。
新型コロナの影響による整理解雇、有期雇用の従業員の雇い止め、退職勧奨についてお困りの企業様がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。

記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2021年8月3日

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