この記事を書いた弁護士

弁護士・木村哲也
青森シティ法律事務所 代表・所長
八戸シティ法律事務所 代表
主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。
1 過半数代表者の選出とは
従業員代表・労働者代表(過半数代表者)は、労使協定を締結する場合などに労働者側の代表となる者のことです。
従業員の過半数で組織する労働組合が存在しない企業の場合、過半数代表者の選出が必要となります。
過半数代表者の選出が適正に行われたかどうかは、1年単位の変形労働時間制の有効性などにおいて問題となることが多いです。
過半数代表者は、事業場ごとに選出することが必要です。
オフィスや店舗が異なる場所にある場合、それぞれのオフィスや店舗で選出が必要となります。
ただし、出張所や支所などで規模が著しく小さく、独立した事業場と言えない場合は、直近上位の組織と一括して一つの事業場と扱うこともできます。
2 過半数代表者の選出が必要となる場面
過半数代表者の選出は、以下のような様々な場面で必要となります。
【過半数代表者の選出が必要となる場面の例】
①1か月単位の変形労働時間制を採用する場合の労使協定(労働基準法32条の2第1項。就業規則で定めた場合は不要)
②フレックスタイム制を採用する場合の労使協定(労働基準法32条の3第1項)
③1年単位の変形労働時間制を採用する場合の労使協定(労働基準法32条の4第1項)
④1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する場合の労使協定(労働基準法32条の5第1項)
⑤時間外労働または休日労働をさせる場合の労使協定(労働基準法36条1項。36協定)
⑥事業場外みなし労働時間制で所定労働時間を超える時間をみなし労働時間とする場合の労使協定(労働基準法38条の2第2項)
⑦専門業務型裁量労働制を採用する場合の労使協定(労働基準法38条の3第1項)
⑧就業規則を作成または変更する場合の意見聴取(労働基準法90条1項)
など
3 過半数代表者の選出方法
過半数代表者の選出方法は、労働基準法施行規則6条の2第1項に定められており、以下の①~③の条件を満たす必要があります。
①監督または管理の地位にある者(管理監督者)でないこと
管理監督者とは、労働条件の決定、その他労務管理において、経営者と一体的な立場にある者のことです。
管理監督者に当たるかどうかは、「部長」や「課長」などの役職名だけで判断されるのではなく、職務内容、責任と権限(特に人事権)、労働時間に関する裁量、賃金等の待遇に照らし、実質的に判断されます。
なお、過半数をカウントする分母は、管理監督者を含む全従業員であることには注意が必要です。
例えば、全従業員が15名おり、うち2名が管理監督者である場合、管理監督者を除く13名の過半数である7票以上ではなく、管理監督者を含む全従業員15名の過半数である8票以上が選出の基準となります。
②法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして選出すること
単に「過半数代表者を選出する」とだけ告知するのではなく、どの協定等をするための選出であるかを明示したうえで選出する必要があります。
例えば、36協定のためなのか、変形労働時間制の協定のためなのか、ということを具体的に示さなければならないと考えられています。
そして、協定等をする都度、過半数代表者を選出するのが原則的な対応となります。
ただし、明文にはありませんが、選出時に職務範囲と1年程度の合理的な任期を示したうえで、任期制とすることは可能であると考えられています。
この場合、36協定の締結や就業規則の作成・変更など、その任期中に予定している具体的な協定等を列挙して明示するのが一般的です。
この点、従業員の親睦団体の代表者が自動的に労働者の過半数代表者となって締結された36協定を無効とした最高裁判所平成13年6月22日判決【トーコロ事件】があります。
③投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと
投票、挙手の他に、話し合い、持ち回り決議等の民主的な手続により選出することとされています(平成11年3月31日基発第169号)。
メールやイントラネット等を利用し、投票等のシステムを用いることも考えられます。
一方で、会社側が候補者を指名すること、一定の役職者が自動的に過半数代表者となること、一定範囲の役職者の互選により選出することなどは、不可とされています。
4 過半数代表者の選出を適正に行わないことによるリスク
過半数代表者の選出を適正に行わなかった場合、当該過半数代表者により締結された労使協定が無効とされてしまいます。
例えば、36協定が無効とされた場合、時間外労働や休日労働をさせることができず、これに違反して時間外労働や休日労働をさせた場合には、罰則の適用対象となります(労働基準法119条)。
変形労働時間制が無効とされた場合、当該変形労働時間制が不適用の前提で残業代の支払義務を負うこととなります(釧路地方裁判所帯広支部令和5年6月2日判決【労判ジャーナル140号・32頁】、大阪地方裁判所令和2年12月17日判決)。
また、過半数代表者の選出を適正に行わなかった場合、就業規則の作成・変更における過半数代表者の意見聴取もまた、適正に行われなかったこととなります。
その結果、意見聴取の義務に違反したものとして、罰則の適用対象となります(労働基準法120条)。
5 労務問題については当事務所にご相談ください
以上のように過半数代表者の選出を適正に行わないことには、大きなリスクがあります。
「形だけ」だと思っておろそかにしてはいけません。
過半数代表者の選出についてご不明のことがありましたら、労務問題を得意とする当事務所にご相談いただければと存じます。
記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2026年9月8日
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