この記事を書いた弁護士

弁護士・木村哲也
代表弁護士

主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。

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1 刑事告訴・刑事告発とは?

刑事告訴・刑事告発とは、捜査機関(警察または検察)に対し、犯罪の事実の申告をし、犯人の処罰を求めることを言います。

被害者が犯人の処罰を求めることを「刑事告訴」、被害者以外の者が犯人の処罰を求めることを「刑事告発」と呼びます。

2 刑事告訴・刑事告発と被害届の提出の違い

刑事告訴・刑事告発と類似するものとして、被害届の提出があります。
被害届とは、被害者が捜査機関に対して犯罪の被害に遭ったことを申告するものですが、必ずしも犯人の処罰を求める意思表示まで含まれるものではなく、刑事告訴とは区別されます。

そして、被害届の提出では必ずしも捜査機関が捜査を開始する義務を負いませんが、刑事告訴・刑事告発が受理されれば必ず捜査が開始され、検察官から、起訴・不起訴の処分結果の通知(刑事訴訟法260条)、不起訴の場合は不起訴理由の告知(刑事訴訟法261条)を受けることができます。

この点、暴行罪・傷害罪や窃盗罪等の単純な犯罪では、被害届の提出で捜査が進むことも少なくありません。
しかし、企業においてよく問題となる業務上横領罪や背任罪等の複雑な経済的犯罪では、刑事告訴・刑事告発がなければ捜査が円滑に開始されないのが通常であるように見受けられます。

なお、名誉毀損罪・侮辱罪や器物損壊罪等の一部の犯罪では、刑事告訴がなければ犯人を起訴することができないとされており、このような犯罪のことを「親告罪」と言います。
親告罪の刑事告訴は、犯人を知った日から6か月以内にしなければならないのが原則です(刑事訴訟法235条)。

これに対し、企業においてよく問題となる業務上横領罪や背任罪等の犯罪は、親告罪に当たらないものが多いため、犯人を知った日から6か月以内に刑事告訴をしなければならないという期限はありません。
ただし、犯罪が行われてから時間が経ちすぎると、犯罪事実を裏付ける証拠の収集が困難になるなどの問題がありますので、速やかに対応を進めることが強く推奨されます。

3 刑事告訴・刑事告発の手続の流れ

(1)弁護士に相談

刑事告訴・刑事告発は、弁護士に依頼して行うのが通常です。
そこで、まずは弁護士に相談するところからスタートするのが基本です。

自社で刑事告訴・刑事告発を行うことも可能ですが、弁護士が刑事告訴・刑事告発を行うのでなければ、捜査機関が積極的に取り合ってくれないことが多いのが実情です。

(2)事実関係の調査・証拠の収集

弁護士に依頼したあとは、弁護士のアドバイスやサポートのもとに、事実関係の調査と証拠の収集を行います。
捜査機関が円滑に刑事告訴・刑事告発を受理し、捜査を開始するためには、犯罪事実の状況を可能な限りで把握し、裏付けとなる証拠を確保しておくことが必要です。

事実関係の調査や証拠の収集が不十分であれば、刑事告訴・刑事告発がなかなか受理されなかったり、捜査がスムーズに進まなかったりすることが考えられます。
また、虚偽の刑事告訴・刑事告発を行ったものとして、虚偽告訴等罪(刑法172条)により逆に刑事告訴・刑事告発を受けたり、損害賠償請求を受けたりするリスクもありますので、事実関係の調査や証拠の収集をおろそかにしてはいけません。

(3)告訴状・告発状の作成・提出

刑事告訴・刑事告発は、捜査機関に対し、書面または口頭で行うこととされています(刑事訴訟法241条)。
一般的には、収集した証拠とともに「告訴状」・「告発状」という書面を提出することにより、刑事告訴・刑事告発を行うことが多いです。

告訴状・告発状では、犯人がいつ、どのような行為をし、その行為がどのような犯罪に該当するかという事項を説明し、犯人の処罰を求める旨を記載します。
告訴状・告発状の作成には専門的な知識が必要であるため、弁護士に作成してもらうとよいでしょう。

告訴状・告発状が完成したら、所管の警察署に連絡のうえ、証拠とともに持参して提出するのが通常の対応です。
ただし、警察では、告訴状・告発状をすぐに受理することはほとんどなく、コピーをとったうえで、一旦返却してくるのが通例です。

(4)警察との打ち合わせ

告訴状・告発状の提出後、受理に向けた警察との打ち合わせを行います。

警察との打ち合わせでは、詳しい事実関係の確認のほかに、不足している証拠の提出を求められたり、刑事告訴・刑事告発の対象を証拠により裏付け可能な犯罪事実に絞るように求められたりすることがあります。

このような警察との打ち合わせを踏まえ、追加証拠の提出、告訴状・告発状の修正など、必要な対応を進めていきます。

(5)告訴状・告発状の受理

以上のような対応を経て、告訴状・告発状が受理されれば、警察の捜査が開始されることとなります。

なお、刑事告訴・刑事告発があった場合には、捜査機関はこれを受理する義務があるとされています(犯罪捜査規範63条)。
ただし、告訴状・告発状における記載事実が不明確・不特定なもの、記載内容から犯罪が成立しないことが明白なもの等は、受理を拒否できるものと解釈されています。

いずれにしても、告訴状・告発状を受理させること自体がゴールではなく、その後の捜査等が円滑に進められなければ無意味ですので、関連する証拠を可能な限り収集すること、適正な内容の告訴状・告発状を作成すること、警察との打ち合わせなどに適切に対応しておくことが、非常に重要となってきます。

(6)捜査に協力

警察の捜査が開始されたあとも、追加証拠の提出、取調べに応じるなど、捜査に協力していく必要があります。
社長や担当者が警察署に呼び出されたり、警察が会社を訪ねてきたりすることもあり、犯人の処罰に向けて誠実に対応していくことが求められます。

告訴状・告発状が受理されればそれで終わりではなく、捜査に協力するなどの負担があるということも、念頭に置いておく必要があります。

(7)検察庁に送致

警察が犯人を取り調べるなど必要な捜査を行ったあと、犯人と書類・証拠を検察庁に引き継ぎます。
これを検察官送致(送検)と言います。

(8)検察庁が起訴・不起訴を決定

検察庁でも、「起訴」・「不起訴」の判断に向けて、必要な捜査が行われます。
ここでも、捜査に協力する必要があります。

捜査を終えた検察庁は、事件の起訴・不起訴を決定します。
起訴とは、事件を刑事裁判にかけることを言います。
不起訴とは、証拠が不十分であるとか、被害が大きくない等の理由により、刑事裁判にかけないという判断をすることを言います。

(9)刑事裁判

起訴されれば、刑事裁判が行われます。
そして、有罪判決が下されれば、犯人が処罰を受けます。

以上により、刑事告訴・刑事告発の手続が完了することとなります。

4 刑事告訴・刑事告発を行う際のポイント

(1)証拠を揃える

刑事告訴・刑事告発を行う際には、犯罪事実の裏付けとなる証拠をしっかりと収集することが大切です。

警察としては、十分な証拠がなければ最終的に刑事裁判にかけることができないため、捜査を始めたくないと考えることが多いです。
告訴状・告発状が円滑に受理され、捜査を進めてもらうためには、裏付け証拠を可能な限り揃えることがポイントとなります。

また、虚偽告訴等罪による刑事告訴・刑事告発や損害賠償請求といった反撃を受けないためにも、証拠により刑事告訴・刑事告発の正当性を固めておくことが大切です。

(2)刑事告訴・刑事告発の対象を絞る

「犯罪事実があったことが証拠上明確に裏付けられるもの」と「犯罪事実があったことが疑われるが、証拠上明確とは言えないもの」があったとします。

この場合、犯人を可能な限り厳罰に処してほしいという希望から、「犯罪事実があったことが疑われるが、証拠上明確とまでは言えないもの」も含めて全て刑事告訴・刑事告発の対象とするという考え方があります。

しかし、警察としては、証拠上明確とは言えないものについてまで、労力をかけて捜査の対象とすることを嫌がることも多いです。
警察からは、「犯罪事実があったことが証拠上明確に裏付けられるもの」に絞った内容の告訴状・告発状を提出するように求められることが多いでしょう。

このような場合には、刑事告訴・刑事告発の対象を「犯罪事実があったことが証拠上明確に裏付けられるもの」に絞った方が、円滑な刑事告訴・刑事告発の受理と捜査の進行のために有益であることが多いです。

そこで、告訴状・告発状では、「犯罪事実があったことが証拠上明確に裏付けられるもの」に絞って申告をし、処罰を求める旨を記載するとともに、「犯罪事実があったことが疑われるが、証拠上明確とは言えないもの」については、「余罪に当たる可能性があるので、捜査してほしい」旨の付言にとどめるという対応が現実的となるでしょう。

(3)犯罪事実を的確に摘示する

告訴状・告発状では、犯人がいつ、どのような行為をし、その行為がどのような犯罪に該当するかという事項を、的確に記載する必要があります。

告訴状・告発状における記載事実が不明確・不特定なもの等は、受理することを渋られる可能性が高いためです。
また、犯罪事実を的確に記載するものでなければ、その後の捜査が円滑に進むことも期待できません。

こうした告訴状・告発状の作成においては、専門的な知識と技術が不可欠ですので、弁護士に任せるとよいでしょう。

(4)捜査機関に対する進捗確認を行う

他の事件で多忙であるなどの事情で、刑事告訴・刑事告発された事件の捜査がなかなか進まないというケースもあります。
そのような場合には、捜査機関に対する進捗確認を行うことにより、速やかな刑事告訴・刑事告発の受理や捜査の進行を促すことが必要です。

例えば、刑事告訴・刑事告発が受理される前の段階では、提出した書類は見てもらえているか、検討状況はどのようになっているか、などを確認することが考えられます。
刑事告訴・刑事告発が受理された後の段階では、被害者の調書の作成はいつ行うか、犯人の呼び出しはいつ行うか、などを確認することが考えられます。

(5)民事の話を控える

「民事の話」とは、「犯罪を捜査して犯人を処罰する」という刑事の話に対し、「犯罪による被害の賠償を求める」などの民事のトラブルのことを言います。

警察としては、一般的に民事の話には介入しないものとされており、「損害賠償請求など民事の問題解決、あるいは圧力をかけるために捜査を利用されたくない」と考えることが多いです。
そして、刑事告訴・刑事告発の手続は、警察の協力なくして進めることは困難です。

そこで、警察との関係では、民事の問題について積極的に話すことは控えた方が、告訴状・告発状をスムーズに受理してもらえる可能性が高まります。
警察から「示談はどうなっているのか?」と聞かれた場合にだけ、「弁護士を通じて交渉中である」、「犯人が事実関係を否認しており、話し合いの目途が立たない」などの実情を説明すればよいでしょう。

なお、刑事告訴・刑事告発と並行して、損害賠償請求など民事の対応を行うこと自体には、問題はありません。
一方で、被害の回復よりも犯人の処罰を優先したい場合には、示談を拒否するという考え方もあり得ます。

5 刑事告訴・刑事告発のことは当事務所にご相談ください

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刑事告訴・刑事告発のことでご不明のことがありましたら、当事務所の弁護士にご相談いただければと存じます。

記事作成弁護士:木村哲也
記事更新日:2026年5月12日

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