この記事を書いた弁護士

弁護士・荒居憲人
八戸シティ法律事務所 在籍

主な取扱い分野は、労務問題(企業側)、契約書、債権回収、損害賠償、ネット誹謗中傷・風評被害対策・削除、クレーム対応、その他企業法務全般です。八戸市・青森市など青森県内全域の企業・法人様からのご相談・ご依頼への対応実績が多数ございます。

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1 ローパフォーマー社員とは?

ローパフォーマー社員とは、一般的な定義として、仕事の能率が極端に悪い社員のことをいいます。

ローパフォーマー社員は、採用時点でミスマッチが生じていることがあります。
採用面接で適切に選抜できなかったため、社員の考え方や価値観と合わない企業に採用されることが原因です。
このように採用時にミスマッチが生じ、ローパフォーマー社員が存分に能力を発揮できていない場合もあります。

この種のローパフォーマー社員の存在は、企業との相性の問題となるため、一概にローパフォーマー社員の責任であると断言はできません。

一方で、どの企業に採用された場合であっても問題があるローパフォーマー社員もいます。
本来であればこのような社員は採用面接の段階で不採用とするのが理想ですが、企業側が適切に見抜くことができず、採用されてしまうことがあります。
このような本質的に問題のある社員については、企業側がどのような対策を講じていくべきか、雇用管理上の問題となります。

今回は、後者の本質的に問題のある社員を採用してしまった場合の対応方法について、弁護士が解説させていただきます。

2 よくある事例

ローパフォーマー社員の一般的な定義は前述したとおりですが、さらに具体的に、次のようにローパフォーマー社員を分類することができます。

(1)同じ失敗を繰り返す社員

仕事での失敗は誰にでも起こりうるものですが、標準的な能力を持った人であれば、失敗の原因を特定し、次に活かすことができます。
同じ失敗を繰り返さないことは、社会人の基本的な能力として備えるべきものです。

ローパフォーマー社員は、自分の失敗を顧みることができず、同じ失敗を繰り返す傾向にあります。
失敗の原因を理解できないとか、上司からの指摘に耳を傾けることができないといった原因から、同じミスを繰り返します。

(2)極端に仕事が遅い社員

仕事においては、標準的な能力の社員を基準として、一般的に求められる処理スピードがあります。
この会議資料を今週中に準備して欲しい、といった期限が決められた仕事があることは、多くの人が経験することであると思います。
期限が決められた仕事は、基本的にはその期限までに終えることが必要です。

ローパフォーマー社員は、期限までに仕事を終えることができません。

仮に期限に遅れそうな場合であっても、上司に相談して期限を先延ばしにしてもらうといった対応も考えられますが、ローパフォーマー社員はこのような相談もできません。

(3)頼まれた仕事を忘れてしまう社員

特に初めて取り組む仕事の場合、上司からの指示を失念しないように、メモに記録しておくことが一般的であると思います。
人の記憶力には限界がありますので、仕事の漏れがないように、標準的な能力の社員であれば、このように自分なりの対策を考えることができます。

ローパフォーマー社員は、メモを残すことができません。
その結果、頼まれた仕事を忘れてしまい、そのミスを同僚や上司がカバーすることになります。
ローパフォーマー社員は、自分がやるべきことすら忘れてしまい、周囲に迷惑をかけます。

(4)コミュニケーション能力が低い社員

職種にもよりますが、一般的に円滑に仕事を行うためには他の社員や取引先とのコミュニケーションを欠かすことができません。

ビジネスの場におけるコミュニケーション能力とは、飲み会での立ち居振る舞いがうまい、人付き合いがうまいといった、特定の場面に限定された能力ではありません。
スムーズに業務連絡を行い、問題点があれば発見して周囲に共有し、相手の意を上手く汲み取れる能力のことをいいます。

ローパフォーマー社員は、同僚や上司と足並みをそろえることができません。
そのため、取引先とも円滑なコミュニケーションをとることができないため、周囲からの信頼を失うことになります。

コミュニケーション能力は仕事を円滑に行うために必須の能力ですが、ローパフォーマー社員はこの能力を欠いています。

(5)主体性が低い社員

社会人として仕事をする以上、学校で授業を受けるのとは違いますので、主体性を持って仕事に取り組む必要があります。
サラリーマンとして勤務する場合、基本的には会社や上司から振られた仕事を行うことになりますが、それでも言われたことを忠実に行うことだけでなく、自分なりに進めていく必要があります。
標準的な能力を持つ社員であれば、自分なりに問題点を見つけ、処理スピードを改善したり、問題点を職場内で共有したりすることが期待されています。

ローパフォーマー社員は、このような主体性に欠けています。
そのため自分の頭で考えて仕事をすることができず、受け身の姿勢で仕事をしていきます。

(6)能力不足の自覚がない社員

標準的な能力がある社員の場合、自分が足りていない点を客観的に分析し、その改善に取り組むことができます。

ローパフォーマー社員は自分の能力不足を自覚することができず、逆に能力が高いと過信している場合があります。
そのため改善点を自分で見つけることができず、能力向上に向けて行動を起こすことができません。

(7)勤務態度に問題がある社員

ローパフォーマー社員には、これまで指摘した点に加え、勤務態度に問題が見受けられます。
無断欠勤や遅刻が多い、勤務中に私用を行っているという典型的な問題行動も見受けられます。
また、上司や同僚に対し反抗的な態度を取る、仕事を上司やほかの社員に押し付けようとするといったように、社会常識的に見て問題のある行動をします。

このような問題行動が生じた場合、他の社員のモチベーションを低下させたり、管理職がマネジメント面での対応を余儀なくされたりすることになり、企業の大きな負担となります。

3 懲戒解雇は可能?

一般的に、懲戒解雇は認められるハードルが高いため、その適法性について慎重に判断する必要があります。

懲戒解雇が認められる代表的な事例としては、企業の金品を横領するといった、重大な非違行為が認められる場合です。

ローパフォーマー社員は、このような表立った非違行為はなく、様々な観点から見て非生産的な存在と位置付けられます。
次の項目でご説明いたしますように、基本的には人事考課を中心として対応していき、懲戒処分を行う場合でも訓戒処分にとどめておくべきです。

そのため、一般論としては懲戒解雇を行うことはできませんので、注意が必要です。

4 ローパフォーマー社員への対応方法

次に、ローパフォーマー社員への対応方法について解説いたします。

(1)本人に問題点を明確に伝える

ローパフォーマー社員は、能力不足や問題点を自覚していないことがあります。
そのため解決の第一歩として、管理職が本人に対し、「改善が必要である」と明確に伝えることが必要です。

会社にとって一番避けなければならないことは、本人に問題意識を伝えることなく、対応に困窮した結果、解雇してしまうことです。
このような対応は、本人からすれば問題点を知らされることなく解雇されることになるため、納得を得ることが難しく、紛争を誘発するおそれがあります。

そのため、まずは本人に問題点を明確に伝え、はっきりと自覚してもらうことが大切です。

(2)本人が達成すべき目標を明確に決める

次に、本人の改善点や目標について、期限を定めるなどして明確に決めておくべきです。

ローパフォーマー社員に対しては、改善点や目標を一つに絞ることも大切です。
複数のことを同時に処理していくことが難しいためです。
例えば、ノルマが全く達成されないローパフォーマー社員に対しては、達成可能な目標を本人と相談して決めて、1週間に1回の頻度を設定する等して、進捗状況を報告させるようにします。

本人に改善を促すためにも、定期的に面談を行っていくことも有効です。
面談時には、進捗状況について報告を受け、改善点を分析し、上司が適切にアドバイスを行っていくのが理想です。

(3)正しい人事評価を行うこと

ローパフォーマー社員に対しては、このように改善を促していきますが、企業としては毅然とした態度で人事評価を行っていくべきです。

ローパフォーマー社員に対して本人に対する遠慮などから普通の評価をしていると、本人に対して改善が必要だという危機感を持たせることができません。

また、仮に将来的に解雇が必要となった場合、しっかりと人事評価で低い評価をしていないと、本当に解雇が必要だったのかどうか、裁判所に疑問視されるリスクがあります。

そのため、ローパフォーマー社員に対して、現実に沿った人事評価を行っていく必要があります。

(4)配置転換を行う

企業の規模によっては、複数の職種や部署があり、配置転換を行うことが可能な場合もあると思います。

これまでご説明した対応を行っても改善されない場合には、そもそもローパフォーマー社員の担当している業務が本人に合っていない可能性があります。
もちろん配置転換を行うかどうかは企業の経営判断となります。
しかし、配置転換により環境が変化することによって、業務状況が改善される可能性もあります。

また、やむを得ず解雇を行う場合にも、この配置転換を行い、本人にさらなる改善の機会を与えたかどうかが問題視されることがあります。

そのため、配置転換が可能な企業の場合には、ローパフォーマー社員がより能力を発揮しやすい部署への配置転換を検討することになります。

(5)懲戒処分を検討する

ここまでの対応を行っても改善されない場合、懲戒処分を検討することになります。

もっとも、基本的には懲戒解雇はできませんので、より軽い懲戒処分を検討することになります。
懲戒解雇より軽い懲戒処分としては、訓戒、出勤停止、減給といったものがありますが、ローパフォーマー社員に対しては、訓戒処分にとどめておくことがお勧めです。

もちろん事案の内容によりますが、それ以上に重い懲戒処分となれば、不相当に重い処分として、将来的に法的な紛争となるリスクがあります。
そのため懲戒処分を行う場合には、訓戒処分を行い、改善を促すことが適切です。

(6)退職勧奨の上、解雇を検討する

最終的には、雇用契約の解消を検討することになります。

もっとも、すぐに解雇を行うというのではなく、まずは退職勧奨を行って自主的な退職を促します。

退職勧奨とは、社員による自主的な退職を促していくものです。

退職勧奨を行っても効果がない場合、最終的なステップとして解雇を検討することになります。
懲戒解雇が難しいことはご説明したとおりですので、普通解雇を検討することになります。
ただし、普通解雇も解雇の一種ですので、その適法性が認められるハードルは高いものとなります。
その適法性が認められるかどうかは個別の事案に依存しますので、どのような場合に普通解雇を適法に行えると断言することはできません。

仮に解雇が違法と判断された場合、社員からの未払い賃金支払い請求や地位確認請求を受けることになり、企業に莫大な時間的・経済的な負担を生じさせることになります。

このように普通解雇であっても法的なリスクが大きいため、検討する場合には弁護士に事前にご相談いただくことをお勧めいたします。

5 ローパフォーマー社員への対応を怠るリスク

ローパフォーマー社員への対応を怠った場合、周囲の他の社員のモチベーション低下に繋がります。
モチベーション低下の結果、企業全体の生産性低下に繋がるリスクがあります。

また、部署内で不満がたまるリスクがあります。
パフォーマンスの低さを他の社員がカバーすることになりますので、社員同士の人間関係が悪化するリスクがあります。

このようなリスクがありますので、ローパフォーマー社員に対しては、個別の状況に応じて適切に対応していく必要があります。

6 ローパフォーマー社員への対応を弁護士に依頼するメリット

(1)事案の調査

ローパフォーマー社員への対応を弁護士に依頼する場合、弁護士において事案内容の調査を行います。
基本的には企業様からの事情聴取に基づいて弁護士が事案を把握しますが、事案の内容によっては、弁護士が直接、その社員の様子を確認する場合もあります。
企業が社員と面談を行う際に、弁護士が立ち会うことも事案調査の一環として考えられます。

(2)対応方法についての判断と助言

調査の結果、ローパフォーマー社員に対して何らかの対応が必要かどうか、弁護士が企業様と相談の上、判断することになります。
対応方法はこれまでご説明したとおりですが、どの手段が適切であるか、個別の事案に応じて異なるため、十分に打ち合わせを行い、対応を検討していきます。

(3)懲戒処分手続きのサポート

仮に人事考課に基づく対応のみによって改善が見られない場合には、懲戒処分を検討することになります。
懲戒処分としては訓戒処分を行うべきですが、訓戒処分の流れや方法について、弁護士がアドバイスしながら進めていくことになります。
書面で訓戒処分を行うべきこと、その書面の記載内容や交付するタイミング等について、アドバイスさせていただきます。

(4)退職時トラブルの防止・対応

ここまで行っても改善が見られない場合、退職勧奨や普通解雇を検討することになりますが、その際も弁護士がアドバイスさせていただきます。

退職勧奨に移行するタイミングは、早すぎても遅すぎても効果を得られない場合がありますので、タイミングについて弁護士と打ち合わせしながら進めていきます。
退職勧奨を行った結果について、弁護士に共有していただき、本人への伝え方等について、適宜変更していきながらさらに進めていきます。

退職勧奨も成功せず、その社員との雇用契約を解消せざるを得ないと判断される場合には、普通解雇に進むことになりますが、普通解雇の適法性について、弁護士がアドバイスさせていただきます。

仮に普通解雇の適用性が具備されていると判断できた場合、解雇の手続きや解雇予告手当の支払い等、将来的に法的な紛争とならないように弁護士がアドバイスさせていただきます。

(5)解雇後のトラブルに対する対応

ここまで弁護士がサポートさせていただいたものの、元社員の不合理な主張によって解雇を法的に争ってきた場合、その場面でも弁護士が継続的に対応することができます。
元社員が企業に金銭を請求してきたり、不当解雇であると主張してきたりした場合には、弁護士が企業に代わって交渉を行うことができます。

また、労働審判や訴訟に移行した場合にも、適切な手続きを踏んできたことや、元社員の問題点を主張し、企業にとって最善の解決を目指していきます。

7 問題社員対応は当事務所にご相談ください

ローパフォーマー社員のような問題社員に対する対応については、事案に即した個別的な対応が有効なため、慎重に検討・実行していく必要があります。

ローパフォーマー社員といった問題社員のことでお悩みの企業様は、労務問題に詳しい当事務所の弁護士にご相談いただければと存じます。

記事作成弁護士:荒居憲人
記事更新日:2025年10月8日

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