「働き方改革はおかしい」
「働き方改革は労働者を甘やかせすぎではないか?」
「働き方改革は日本を駄目にする」
このような発言をする社長さんをこれまでに複数見てきました。
大抵が田舎の年配の社長さんです。
働き方改革への蒙昧な批判を耳にするたびに、はっきり言ってうんざりしています。

働き方改革とは、どのような目的で政府が推進してきたのでしょうか?
労働人口の減少・不適切な長時間労働・労働生産性の低迷などの課題を抱える我が国において、働き方改革によって限られた労働人口を有効活用して生産性を向上させ、経済を発展させることが目的なのです。
そして、その目的のもとに、女性・高齢者・外国人の活用の推進、同一労働同一賃金、長時間労働の制限など、様々な働き方改革の施策が行われているのです。
労働者を甘やかせるなどという馬鹿げた目的が根底にあるような制度ではありません。
どうして短絡的に「労働者の甘え」などと発想し、脊髄反射のような攻撃を加えるのでしょうか?

また、働き方改革は、我が国の最高の頭脳である官僚を中心に、各界の有識者が議論に議論を重ね、国権の最高機関である国会での審議を経て完成した成果物です。
それを自身にとって有り難くないからといって、知ったような口ぶりで大して深く考えずに批判を加える感覚は、まったく理解できかねるものです。
働き方改革の目的を十分に理解し、世の中の変化を受け入れて柔軟に適応しながら、自社の経営を改善・発展させることによって、我が国の経済の発展を支えていく。
これこそが経営者の使命であり、分際を弁えるということではないでしょうか?
働き方改革とは、我が国の数十年先、百年先を見据えた大計であり、今の世代の人たちに賞賛されているようでは話になりません。
田舎の年配の社長から扱き下ろされているくらいが丁度よいのでしょう。
聡明なる社長さんであれば、高い志をもって働き方改革に全力でコミットしていただきたいと思います。

働き方改革に適応できないような駄目会社は、経済活動の世界から退場せよ。
これが国からのメッセージです。
働き方改革に関連する法律を遵守できないのであれば、我が国の国民である労働者を一人も巻き込むことなく完全な個人事業を営めば済むことですし、事業活動の場として日本を選択してはいけません。
働き方改革への文句・愚痴は一切不要であり、黙って経営の体制を変化に適応させていくのです。
働き方改革ごときで右往左往するのは、経営者として情けない姿であると思いませんか?

働き方改革への蒙昧な批判は、例えば田舎の年配の社長さん同士が赤提灯で管を巻いて傷を舐め合うとか、場末のスナックで年配のママに愚痴を吐いて慰めてもらうなどであれば構いませんが、素面の状態で本気で口にするようなことがあってはいけません。
私自身、田舎の年配の社長さんから、業務の場において、「働き方改革は労働者を甘やかせすぎではないか?」などと言われたことが複数回ありますが、呆れ果ててしまいます。
「法律だから黙って守れ」としか返しようがありません。
働き方改革を蒙昧に批判し、文句ばかりの偏屈な経営者。
働き方改革の目的を理解し、軽やかに適応していく優秀な経営者。
どちらの経営者になるべきでしょうか?
立派だと思えるような社長さんは、私を前に働き方改革に関する不毛な愚痴を吐くような真似はしないものです。
確かに、働き方改革に従って自社の体制を変化させていくことには、多くの困難を伴うのかもしれません。
しかし、自社の体制を働き方改革に適応させ、労働生産性を改善させることをもって、我が国の経済の発展を僅かでも支えるのだという気概のもとに、文句を言わずに実直な精神をもって経営の改革に尽力するという経営者の本分を、必ず果たしていただきたく存じます。
私は、このような志ある社長さんとお付き合いしていきたいと思っています。

なお、本コラムを読んで私を労働者寄りと考え、当事務所へのご相談を検討される労働者側の方もいらっしゃるかもしれませんが、申し訳ございません。
私は経営者寄りです。
当事務所では、労働者側の労務問題は、事故型の労働災害(労災)の被害案件以外には、ご相談・ご依頼をお受けしておりません。
ご了承ください。
本コラムは、大変深刻な日本経済の難局を乗り越えるキーとなる社長さんたちに向けて、働き方改革を題材に叱咤激励する意図で書かせていただいたものです。

(弁護士・木村哲也)